研究実績の概要 |
方向統計学に関する研究を進めた。方向データは円周上の点で表され、周期性を持つことから通常の統計学の手法をそのまま適用すると不具合が起こる。具体的には以下のような研究を進めた。 ・円周上のデータに対するコピュラ関数の研究を完成させた。円周上の分布関数は[0,2π)上で定義し、原点の取り方を変えることで同じになるものは同値な分布関数と考えることによって、円周上データのコピュラ関数を定義した。そのもとで、通常のデータにおけるコピュラ関数の上限、下限であるFrechet-Hoeffding upper (lower) boundの円周上版を提案し、それらが[0,1]^2上の45度線上に一様に確率が分布する分布関数であることを示した。本研究はスペインでの国際学会や国内での研究集会で発表し、また、research paperとして書籍の一部という形で掲載が決まった。 ・円周上時系列データに対して、Mixture Transition Distributionを用いたmulti-order Markov processを提案した。推移密度関数には平均方向がゼロの周期密度関数を設定し、そのもとで円周上版の自己相関関数、偏自己相関関数、スペクトル密度関数の表現を得た。本研究はルクセンブルクでの国際会議で発表し、また論文としてまとめ投稿段階まで持って行った。 ・円周上のデータを複素数平面の単位円上の点と考えることにより、円周上時系列データを複素数値確率過程によって表現した。複素数値確率過程のスペクトル表現を用いることで、円周上時系列データのスペクトル密度を表現した。本研究はイタリアでのワークショップで発表した。また法政大学での研究集会で発表し、所報として掲載予定である。
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