Ranked Set Sampling (RSS) は,母集団からの標本抽出方法の一つである.RSS を用いて得られたデータは,単純な無作為抽出によって得られた同じ標本サイズのデータよりも推定された分散が小さくなる性質があるため,様々な分野で用いられるサンプリング方法である.しかし,実際には数値実験によって妥当性を示す研究成果が多く,理論的性質の研究は十分ではない.そこで,本研究では多変量データに対する RSS の適用,およびノンパラメトリック法の理論構成を研究目的としている. 多変量データにノンパラメトリック法を適用する場合,順位の決定方法が重要な役割を果たすが,本研究成果として多変量データに対する新しい順位決定方法を提案した.しかし,実際の RSS データはどのような分布に従うか不明であるため,カーネル密度推定を用いて分布推定やパラメータ推定を行なった.さらに,生態データで頻繁に用いられる関数データに対する検定統計量を提案し,漸近分布および漸近検出力を導出した.理論的性質のみならず,数値比較によって提案統計量の妥当性を示し,実データ解析へ応用した. ノンパラメトリック法の理論構成では,主として 1 標本,2 標本,多標本検定問題に対する新しいノンパラメトリック検定統計量の提案を行なった.検定統計量の極限分布や精緻な近似分布の導出を行ない,数値実験を通して提案統計量の有用性を示した.また,漸近検出力や一致性,不偏性など対立仮説の下で重要な理論的性質について示した.
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