研究課題/領域番号 |
18K11203
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西山 陽一 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (90270412)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルチンゲール / 最大不等式 / ヒルベルト空間 / 高次元データ / 経験過程 / Dantzig selector |
研究実績の概要 |
本年度における研究実績は、二つある。一つ目は、重みの付いたマーク付き経験過程の $L_2$ 空間における弱収束の理論を研究し、その統計的応用(仮説検定への応用)を考案したことである。この研究は、2010年ごろから構想を温めていたものであるが、途中、2013年より佃康司氏との共同研究として徐々にその考察を深めてゆき、本年度にようやく完成・出版に至った。この研究結果の最大の利点は、重みとして、通常の sup ノルムを用いた場合には取り扱うことができず、$L_2$ 空間において扱えばうまく機能するようなものも採用できる点である。より具体的には、例えば、Kolmogorov-Smirnov や Cramer-von Mises の形式によるもののみならず、Anderson-Darling の形式による検定統計量の漸近分布をも導出できる。なお、この内容は Tsukuda and Nishiyama (2021, Electronic J. Statist.) において出版された。
二つ目は、2012年から執筆を始めた著書『Martingale Methods in Statistics』が、ようやくほぼ完成し、目下のところ最終査読が行われているという段階まで漕ぎ着けることができたことである。出版予定は 2021年10月頃である。その内容には、長年の念願であった stochastic maximal inequality も、Appendix において含まれている。この結果の応用は、未発表のものも含めればすでにいくつか得られているが、それらをより発展させて、将来における本書の 2nd version の出版に繋げたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、本研究の主目標であった stochastic maximal iequality の定式化と証明に成功した。この研究成果は、高次元統計学の進展に直接的に大きく貢献することが予想される。実際、いくつかの応用もすでに着実に考察できている。
上記の研究題目に直接的な関連の薄い研究課題も、着実に成果を挙げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた stochastic maximal inequality の応用の考察に力を入れたい。それらの集大成を、著書『Martingale Methods in Statistics』の 2nd version に含めて、数年後に出版できれば理想的である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、交付された助成金を、コロナ禍の状況においても適切に使用する努力の中でやむを得ず生じた。その額は甚大なものではないため、次年度に交付予定の助成金と併せて適切に使用できると考えている。
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