研究課題/領域番号 |
18K11203
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西山 陽一 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (90270412)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統計推測 / 漸近理論 / マルチンゲール / 最大不等式 / 推定方程式 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は二つある。一つ目は、従来より主として独立同一分布に従う観測データに基づくモデルにおいて研究されてきた、Bernstein の不等式等を用いたスタンダードな統計推測の理論を、確率過程モデルにおける理論に拡張する、ということである。この目標については、本年度は、その基礎となるさまざまな手法を一望する著書 "Martingale Methods in Statistics" の執筆を脱稿し、2021年11月に出版した。この分野の研究の礎となる著作であると自負しており、自分自身のみならず広く世界の研究者が今後研究発展に関与していく中で有益になると考えている。 二つ目は、Kolmogorov 以来の chaining や bracketing の手法を根本的に見直し、Bernstein の不等式等の使用を最小限にとどめ、主として確率解析における部分積分の公式や伊藤の公式を用いることにより、全く新しいタイプの最大不等式を導出することである。これはとても野心的な目標であるが、もし成功すれば、高次元統計学に画期的な進歩が期待されるものである。この目標については現在までのところ、当初予想していたものとは少々異なる形ではあるが、"Stochastic Maximal Inequality" と称する新しい不等式の証明に、2021年4月ごろ成功した。当初は独立した学術論文としての公表を予定していたが、ちょうど上述の著書の出版の時期と重なったっため、同書の Appendix に収録した。今後、高次元マルチンゲール理論の発展の基本ツールとして有用となるであろうことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチンゲール理論を概観する著書の出版を完遂し、また、その高次元化の基本ツールとなる "Stochastic Maximal Inequality" の証明に成功したことは、当初の研究予定に沿った研究経過を辿っていることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
新しく証明した "Stochastic Maximal Inequality" を基軸として、マルチンゲール理論の高次元統計学への応用について研究していく予定である。高次元統計学の新しい枠組みをも創始できれば理想的である。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金を最も有効に使用することを考えたため、次年度使用額として過度に多額でない助成金が発生した。翌年度分として請求した助成金と合わせて、やや高額な物品をも購入することが可能となり、有効に使用していくことができると考えている。
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