研究課題/領域番号 |
18K11203
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西山 陽一 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (90270412)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マルコフ連鎖 / 有向グラフ / PageRank / 順位統計量 |
研究実績の概要 |
本研究の主目標は、従来より研究されてきた独立同一分布に従うデータに対する統計的推測理論およびそのための確率論的ツールを、確率過程、特にマルチンゲールの枠組みで発展させることである。その骨格となる部分は、2021年11月に発刊した「Martingale Methods in Statistics」という著書で、達成することができた。 本年度は、その応用の部分で進展があった。米国Google社の検索エンジンシステムの基礎を担う、PageRankという指標がある。それは、ウェブページの重要度を判定するための基準を定めるものであり、グラフ理論の枠組みで、確率過程(特にマルコフ連鎖)のツールを援用して定義、実装される。これは元々1998年に開発されたものであったが、これまでにもさまざまな工夫が加えられてきた。本年度、この発展の流れに一石を投じる貢献を行った。より詳細には、従来のPageRankがチューンングパラメータの取り方によってその順位統計量が変化してしまうという現象を呈していたのに対し、新たにMarkovRankという指標を定義し、それの順位統計量がチューニングパラメータに依存せず、与えられたネットワークシステムを表す有向グラフの構造のみによって一意的に定まることを、マルコフ連鎖の理論を用いて証明した。Rによる実験データによる検証も行った。研究成果は、査読つき学術誌に公表した。(ただし、Google社は元のPageRankの使用を終了しているため、本研究は一定の学術的価値はあるものの、その改良部分に対する特許等を取得するなどの実益を伴う貢献にはならないこととなった。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までの研究で、マルチンゲール理論の統計への応用に関する成書を英語で出版できた。これだけを以てしても、予定した研究目標を達成したと考えられる。 さらに本年度の研究で、PageRankおよびその関連領域を研究できたことは、当初はまったく想定しておらず、予期しなかった研究方向で有益な成果が得られたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
LASSOやDantzig Selectorといった高次元統計学の理論を、確率過程の枠組みでより発展させることを目標としている。特に直近では、あらゆるスパース推定量の改良をもたらすAdaptive Refinerの開発に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
元来は海外出張して国際共同研究を行うことを予定していたが、コロナ禍のためそれが実行できなかった。そこで予算を他の用途に使用していたが、結果として約28万円の繰越が生ずることとなった。この残額は次年度に使用させていただきたいと考えているが、海外出張には金額的に不足であるため、必要度が次に高いMacノートパソコンの購入に使用したい。理由は、これまでiPadを使用して効率的な研究ができるようになってきているが、iOSのパソコンはまだ所有していないため、ファイルのやり取りをiPadとの間でスムーズにできる高性能コンピュータデバイスを一台購入したいからである。
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