• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

有向グラフにおけるノードクラスタリング法の数理解析的アプローチについて

研究課題

研究課題/領域番号 18K11207
研究機関東京都立産業技術高等専門学校

研究代表者

保福 一郎  東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (10229205)

研究分担者 横井 健  東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 准教授 (40469573)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード有向グラフ縮約 / ノードクラスタリング法 / グラフ構造の複雑度
研究実績の概要

本研究の目的は平成22年度~24年度(基盤研究C;本人研究代表者)の科研費採択期間中に開発した,有向グラフを縮約する手法(以下ノードクラスタリング法:NCMと略す)を基に,有向グラフの縮約に関わる様々な数理指標を開発し,与えられた有向グラフの最適な縮約を行う数理モデルを構築することである.NCMの特徴は大規模な有向グラフに対しても対応できる様に,縮約の規模を調整できるパラメータkを備えたことである.しかし現状ではNCMを適用する側の判断でkを決定しているため,縮約の最適性については言及できていない.そこで本研究では,最適な縮約を与えるkの導出法を確立するため,グラフ縮約に関わる様々な指標,具体的には与えられた有向グラフのグラフ構造の複雑度を表現できる指標(複雑度と記す),及びNCMによって生じる縮約に関わる情報損失量及や情報吸収量等を表す定量的尺度を開発する.そしてこれらの指標の開発を基にグラフ縮約の一連の処理過程を多角的に解析し,最適な縮約を与えるパラメータkの決定法を与えるのである.

本研究を完成させる課題は,大きく分けて次の5つに分けられる.
(1) グラフ構造の複雑度を表すパラメータの開発,(2) グラフ自体が与える情報量の導出,(3) 有向グラフの縮約率の提案,(4) 最適な縮約についての数理的意味づけ,(5) 独立ノード,中継ノードの吸収法.

平成30年度においては,まず(2)に示すグラフの情報量を示す指標の開発を基として有向グラフの複雑度を定義することができた.さらに(5)の手法を確立し,(2)と(5)より,(3)の縮約率を表す指標を提案することができた.これらの研究遂行により,(4)の課題を解決するための研究土台が構築されたことになる.平成31年度では(2)に示すグラフの情報量を多角的に解析し,最適な縮約が示す数理的根拠を導出したいと考える.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究代表者らが提案したNCMの開発の基は,グーグル等の情報検索エンジンの2つの代表的なWeb順位決定の手法(PageRankとHits)を融合させた新たなアルゴリズム(PH Algorithm)の開発と,ノード間のクラスタリングを行うアルゴリズム(Node-Clustering Algorithm)の開発による.開発の経緯であるが,研究代表者らは先行研究として「ペロン-フロベニウス定理」を基としたランキング問題に従事してきた.ところがこの研究内容とPageRankの数理手法が似通っており,更に研究代表者らの提案するランキング法はWebランキングの手法と比べ多岐に渡る応用が可能であった.そこで本ランキング手法を応用して2つの代表的なWebランキングアルゴリズム(HitsとPageRank)を融合した新たなアルゴリズム(PH algorithm)を開発することができた.即ち,研究代表者らが専門としている行列解析に関わる領域を土台とした手法の提案であったため,モデル解析が行いやすい様に確率則を導入する発想に至りNCMを提案することができたのである.NCMは与えられた有向グラフの全情報をノード関係行列(Node Connction Matrix)の成分を用いてノード間の関係を表現する.この行列は2つの確率事情の結合分布の特性を有する.そこで情報エントロピーを基としてグラフの複雑度を測れる指標を開発したところ,検証によりこの指標はグラフ複雑度を反映させていることが判明した.これにより縮約を行う前と行った後のグラフの縮約率を導出することに成功したことになる.縮約率の導出は本研究遂行のための幹となる部分であるため,研究土台が構築されたことになる.これらの研究経過から現段階での研究の進捗は予定通り進んでいると判断する.

今後の研究の推進方策

平成30年度においては,H30研究実績の概要で述べた,(2),(3),(5)の課題を解決することができた.今後の研究の推進方策としては,与えられた事例に対する有向グラフに対し,最適な縮約を与えるkを決定することである.NCMに関わる数理指標の幹は2つある.1つは有向グラフの縮約率であり,もう1つは縮約により吸収された情報の割合(The rate of Absorbed Information:情報吸収率と記す)である.縮約率が高ければNCMの適用によりグラフはより簡素化されるため,現象の流れを骨格(ハイライト)として表現することができる.しかし情報吸収率は高ければ縮約率が高くなるというものではない.情報吸収率が高い場合はそれだけノード間の入出力の関係が密接に絡んでいるケースが多く,いわば情報が密集している状況と言える.そこでこれらの情報の関連性をパラメータkにより調整し,ノード間の入出力の関係がある程度保持した状況で行う縮約が本研究における理想的なパターンであると考える.そこでH31年度は,ノード数が100程度の小規模な有向グラフを与える事例についてNCMを適用し,先に述べた縮約率と情報吸収率の関係性を検証して理想となる縮約の方向性を探る.

更なる研究としてだが,NCMは現象を有向グラフで表現できさえすればノード間のクラスタリングを行ってグラフを縮約することができる.そこでH31年度はNCMを応用した新たな適用法についても提案したいと考えている.現段階では,一般に用いられている様々なクラスタリング手法の評価を与える指標をNCMを応用して導出する研究を行うことを考えている.

次年度使用額が生じた理由

研究の進行状況は当初の予定どおり遂行できたが,予定していた国外での国際会議での発表が日程等の関係から不可能となった.その結果,国内で開催される国際会議に参加して成果を発表したため,国外での国際会議参加予定の予算が未執行という形になり残金が生じた.H31年度は,この残金を用いて海外での国際会議に参加し,成果を発表する予定である.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] An Application of a Method for Verifying the Validity of Groupings2018

    • 著者名/発表者名
      I. Hofuku and T. Yokoi
    • 雑誌名

      INFORMATION

      巻: Vol.21, No.12 ページ: pp.2339-2346

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Method for varifying the Validity of Groupings2018

    • 著者名/発表者名
      I.Hofuku and T.Yokoi
    • 雑誌名

      Proceedings of the 9th International Conference on INFORMATION

      巻: Vol.9 ページ: pp.5-9

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Method for varifying the Validity of Groupings2018

    • 著者名/発表者名
      I.Hofuku and T.Yokoi
    • 学会等名
      INFORMATION
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi