研究課題/領域番号 |
18K11225
|
研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
横山 孝典 東京都市大学, 情報工学部, 教授 (60386357)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 組み込みシステム / サイバーフィジカルシステム / 分散処理 / リアルタイム処理 |
研究実績の概要 |
本研究は、無線通信のように通信時間が変動するネットワークを含む環境においても、ジッタが小さくリアルタイム性のあるサイバーフィジカルシステムを実現できる分散処理環境を開発することを目的としている。本分散処理環境を適用することで、実世界との接点である入出力処理のみを物理時間に同期して実行し(物理時間駆動処理)、それ以外の計算処理は論理的な時間に基づいて実行する(論理時間駆動処理)ことで、通信時間の変動を許容しながら、ジッタが少なく応答時間に優れた分散処理を実現できる。本分散処理環境は、物理時間駆動処理と論理時間駆動処理を行うための「分散処理実行環境」と、その分散処理実行環境上で動作するアプリケーションを開発するための「ソフトウェア開発環境」から成る。 「分散処理実行環境」はリアルタイムOSと分散ミドルウェアから成る。これまでに、固定優先度スケジューリングと論理デッドラインによるEDFスケジューリングが可能なスケジューリング機構を有し、周期タスクと非周期タスクが混在するシステムにも対応できるリアルタイムOSの実装をほぼ終了した。また、論理時間管理機能およびタイムスタンプ付きメッセージ通信処理機能を有し、周期メッセージと非周期メッセージを扱える分散処理ミドルウェアの実装をほぼ終了した。 「ソフトウェア開発環境」については、SimulimkモデルからUML記述された分散処理モデルを生成するモデル変換ツールと、分散ミドルウェア向けのアプリケーション構成情報を生成するツールの実装をほぼ終了した。 しかしながら、令和2年度は新型コロナウイルスCOVID-19の影響で当初の計画通りの研究活動ができず、最終成果をまとめて本研究を完了するには至らなかったため、研究期間を延長することとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、「分散処理実行環境」および「ソフトウェア開発環境」の開発を完了して評価を行い、学会発表や論文投稿を行なう予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスCOVID-19の影響で予定通りの研究活動が困難であったため、当初の計画通りの進捗を得ることはできていない。 「分散処理実行環境」については、リアルタイムOSの固定優先度スケジューリングと論理デッドラインによるEDFスケジューリングが可能なスケジューリング機構をベースに、周期タスクと非周期タスクが混在するシステムにも対応できるように拡張を行った。また、分散ミドルウェアについては、論理時間管理機能およびタイムスタンプ付きメッセージ通信処理機能を拡張し、複数の入力メッセージの時間的整合性を保証できる機能を実装した。そして、リアルタイムOSおよび分散ミドルウェアを統合した。 「ソフトウェア開発環境」については、SimulimkモデルからUML記述された分散処理モデルを生成するモデル変換ツールを設計・実装した。また、物理時間と論理時間を考慮したアプリケーション開発を支援するためのリアルタイム設計ツールとして、文字列またはUMLで記述したアプリケーションモデルから分散ミドルウェア向けの構成情報を生成するツールを設計・実装した。 以上のように「分散処理実行環境」「ソフトウェア開発環境」とも実装はほぼ終了した。しかしながら、十分なテストや性能および有用性の評価を行うには至っていない。またそのため、最終研究成果の学会発表や論文投稿も行っていない。このため「やや遅れている」と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、「分散処理実行環境」および「ソフトウェア開発環境」のテストおよび評価を行い、必要によりその評価結果をフィードバックして機能改善や性能向上を図る予定である。 具体的には、「分散処理実行環境」に対して以下を実施する。リアルタイムOSについてはスケジューリング機構の実行時間を測定して性能を評価する。分散ミドルウェアについては、リアルタイムOSと統合化してテストを行った後、その処理時間を測定して性能評価を行う。そして評価結果を分析し、機能改善および性能向上の余地がある場合は改良を行う。 「ソフトウェア開発環境」に対しては以下を実施する。モデル変換ツールについては、現実のアプリケーションを対象に適用実験を行い、その有用性と適用可能範囲について評価する。分散ミドルウェア向けの構成情報を生成するツールについては、いくつかの分散システムへの適用実験を行ってその有用性を評価し、改善の余地がある場合は改良を行う。 そして、それらの評価結果に基づき、本研究の最終成果をまとめて学会発表および論文投稿を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウイルスCOVID-19の影響で計画通りの研究活動が困難であったため、十分な評価を行うに至らず人件費(謝金)が発生しなかったこと、および、そのために最終研究成果をまとめて学会発表や論文投稿を行うには至らず、旅費や学会参加費、論文掲載料が発生しなかったことによる。 次年度使用額については、評価の実施に伴う人件費(謝金)、研究発表のための学会参加費や旅費、そして論文掲載料として使用することを計画している。
|