本研究の目的は、無線通信のように通信時間が変動するネットワークを含む環境において、ジッタが小さくリアルタイム性のあるサイバーフィジカルシステムを実現できる分散処理環境を開発することである。本分散処理環境は、物理時間駆動処理と論理時間駆動処理を行うための「分散処理実行環境」と、その分散処理実行環境上で動作するアプリケーションの開発を支援するための「ソフトウェア開発環境」から成る。 「分散処理実行環境」はリアルタイムOSと分散ミドルウェアから成り、前者については、物理時間駆動処理向けの固定優先度スケジューリングと、論理時間駆動処理向けの論理デッドラインに基づくEDFスケジューリングの両者をサポートするスケジューリング機構と、それらスケジューリングアルゴリズムに対応したリソース管理(排他制御)機構を有するリアルタイムOSの実装および評価を完了した。後者については、入出力タスクは物理時間に同期して実行する物理時間駆動動作を行い、入出力以外の処理を行う算出タスクは通信時間の変動の影響を受けない論理時間に基づいて管理される、論理時間駆動動作を行う機能を持つ分散ミドルウェアの実装および評価を完了した。 「ソフトウェア開発環境」については、Simulinkモデルを入力し、UMLで記述した分散処理モデルを生成する、モデル変換ツールの実装および評価を完了した。本モデル変換ツールが出力する分散処理モデルは、レプリカを用いて位置透過性を実現する時間駆動分散オブジェクトモデルに基づくもので、上記「分散処理実行環境」上での動作に適している。 そして、以上の研究成果を国際会議で発表した。
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