本研究の目的は,High Impact Defects (HID) の混入をモダンコードレビューの段階で防ぐ手段を提供することである.そのために本研究課題では以下の研究目標を設定した. (研究目標1) HIDの見逃しレビューの実態調査: HIDの混入を見逃した際のコードレビューとHID発見後のコード修正に伴うコードレビューとの比較分析を通じて,HIDの見逃し原因(混入原因)と除去方法を明らかにした. (研究目標2) HID混入予測モデルの構築と評価: コードレビュー開始時にHIDに関係するコードかどうかを判別するためには2つのモデルが必要となる. (2-1) コードレビューが不具合修正を対象として行われる場合: 不具合票をベースにHIDか否かを判別するため研究課題で構築した判別モデルを利用した.(2-2) コードレビューが機能追加等を対象として行われる場合: 不具合票とコードレビューは紐付いていないため,当該コード変更がHIDをもたらすかどうかを予測する判別モデル(コード差分情報をベースにした判別モデル)を構築した. (研究目標3) HIDの除去方法を知識ベース化: (研究目標1)の成果からオープンソース開発に携わるベテランの開発者が「HIDをコードレビューにおいて何故見逃したのか?」と「HIDをどのような方針に基づいて除去したのか?」についての情報が得られると期待される.これらの情報をHIDの種類別,見逃し原因別,対処方法別に整理することで,今後HIDが検知された場合に素早く,かつ,安全に除去するための知識ベースを構築した.
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