本研究の目的は,統一的なスキーマを定義する必要がなくかつ様々な変化に対応可能なP2Pアプローチによるデータ相互運用問題において,検索結果の信頼性を計算する枠組みを構築することである.P2Pアプローチでは,あるピアAから別のピアBへのデータ変換であるスキーママッピングによってデータ統合が実現される.ここでスキーママッピングはデータベースビュー定義とみなすことができる.ピアBにおけるデータの更新をピアAのデータに反映させることは,ビュー更新問題と呼ばれ,データベースの研究分野では古くから長年取り組まれてきた未解決問題であったが,近年研究代表者らの研究で一つの解決策を示した.今年度の成果は,データ更新の信頼性の計算手法とビュー更新を高速に行う手法を開発した. 研究期間全体を通じて実施した研究成果としては以下の通りである. (1)関係データベース問合せ言語の一つであるDatalogを用いて,データベースに対する有効な更新からビュー定義を導出する手法を提案し,実装によりその有効性を確かめた. (2)Datalogを用いたビュー更新の記述に関するデバッガを開発した.入力したビュー更新戦略が正しいものかどうかを判定し,正しくない場合に,なぜ正しくないのかを反例を生成することで利用者に通知する枠組となっている.これにより,利用者はビュー更新の記述が容易にできるようになった. (3)非再帰データログを用いたビュー更新問題の解決手法をさらに発展させ,再帰が扱えるように対応し,実用的な複数の例を用いてその有効性を確認した. (4)ネットワークに閉路が存在する場合の取り扱いをidenpotentとして扱うような数学的な枠組みを用意した.これにより、XQueryの各演算子が持つ数学的な性質と来歴情報が持つ数学的な性質の間に準同型が成り立つように定義でき、来歴情報の有用性を確認することができた.
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