本研究では,大学などの組織が,所属する拠点間を接続し,かつ外部ネットワークと接続するために所有する組織内ネットワークの消費電力削減方式を開発することを目的とする.ここで想定している組織内ネットワークとは,OpenFlowスイッチで構築されたSDN (Software Defined Network)であり,コントローラからリンクの最大通信速度などの設定を集中管理できることを仮定している.そして,一台のスイッチにつながるクライアントが,外部ネットワークへ接続することを想定した他のスイッチにつながっているサーバと通信する状況を前提としている.最終年度は,交付申請書の研究実施計画で述べた「(2) 複数の拠点が同時に通信した場合の通信速度切替方式の開発」を行った. 昨年度までの研究成果により,2つの拠点から同時に外部ネットワークと通信することが可能となったが,拠点間で通信を行うことは考慮していなかった.しかし,ある拠点に組織内で使用するデータベースやファイルサーバを設置などすると,拠点間で通信することになる.このような状況に適用できるように提案方式を拡張した.状況に応じて自動的に通信速度が切り替わることまでは実現していないが,切り替わった場合に,消費電力が低下する見通しを示した. 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として,申請時の研究計画書で述べた開発は概ね達成したと言える.特に,申請時では各拠点は外部ネットワークに接続することのみ仮定したのに対し,拠点間の通信を可能としたのは大きな進展である.しかし,本研究の通信実験では,3拠点のネットワークにとどまっているのに対して,申請時の研究計画書ではネットワーク構成図に拠点を5つ記載していた.このような規模の大きなネットワークでの実験が出来なかったところが反省点として挙げられる.
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