研究課題/領域番号 |
18K11254
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
吉田 紀彦 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00182775)
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研究分担者 |
松本 倫子 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90447277)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コンテンツ指向ネットワーク / IoT / 経路制御 / モビリティ |
研究実績の概要 |
(1) CCNも含むICNでは、コンテンツの識別子が経路制御を支配するので、コンテンツの内容を正しく反映することと、効率的な経路制御を可能にすることの両面から、識別子を適切に与える必要がある。本年度は、まず文書コンテンツについて、自動要約技術を応用することで、コンテンツの内容を適切に反映する識別子の与え方の基礎を固め、その成果は国際会議に採択された。また、効率的な経路制御に向けた識別子の階層化やハッシュ化について、基礎的な検討・考察・設計を進めた。 (2) ICNの内でも特にCCNは、Publish/Subscribe技術を活用して経路制御を行う。本年度はまず、Publish/Subscribe技術一般という見地から、すでに確立された応用であるセンサ・ネットワークのDirected Diffusionを題材に取り上げて、モビリティへの対応方式を考案し、国際会議で発表した。この成果はほぼそのままCCNにも適用できるものであり、確率的CCN経路制御の実現に向けて、基礎的な設計を完成させ、シミュレーションによる予備的実験で検証した。関連して、モビリティ対応において重要となるコンテンツ・キャッシュの扱いについても、研究成果を国内全国大会で簡単に発表した。 (3) CCNの具体化においては、既存のインターネット(IPネットワーク)上にオーバーレイ・ネットワークとして実装する可能性を考慮する必要がある。それは2つのネットワークが貼り合わされた重層構造となるので、経路制御のありかたや最適化も、個々の層ではなく、両層にまたがる形で扱う必要がある。そのような研究が相互依存ネットワーク(Interdependent Networks)という新しい分野で進んでいるので、我々自身も本研究に密接に関係するテーマとして取り上げ、その成果を国際会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はCCN経路制御の最適化とモビリティ対応の2つを目的としている。 実績概要の (1) は第1の目的に関係するものである。関連研究の調査を進めて、未だ見受けられないことを確認するとともに、研究計画に記した「第1年度は基本設計を行う」に従って取組みを進めることができ、関係する研究成果は全文査読の国際会議に採択されている。 実績概要の (2) は第2の目的、すなわちネットワークの動的再構成への対応に関係するものである。関連研究の調査分析を進め、研究計画に記した「第1年度は基本設計を行う」に従って、簡単な予備実験での検証まで行うことができ、関係する研究成果を全文査読の国際会議で発表している。 実績概要の (3) は、本研究の目的や計画に明確には含まれないが、極めて密接に関係する重要なテーマである。関連研究の調査分析を進め、関係する研究成果を全文査読の国際会議で発表している。 当初は予期していなかった問題などは起こっておらず、以上から、概ね順調な進展と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
第1の目的については当初の研究計画に従い、分散ハッシュ表をCCNの経路制御に導入する方式を構築する。構造化P2PのTapestryで提案されたハッシュ値の前方一致で経路を絞り込んでいく方式について、CCNの識別子の階層構造に割り当てる方式、Plaxton木をルータ・ネットワークに局所性も考慮しつつ写像する方式を設計構築する。 第2の目的についても当初の研究計画に従い、Publish/Subscribe技術に基づくCCNについて、コンテンツのキャッシュおよび要求パケットを確率パラメータに従ってネットワーク上に散在するルータに分散させる方式、動的最適化を実現する方式を設計構築する。 それらを踏まえて、今後は両者、すなわち分散ハッシュ表とPublish/Subscribe技術の融合に着手し、シミュレータ構築など評価実験の準備を進める。 以上に関係する研究成果は、学会発表、そして国際会議および学術論文誌への投稿に積極的に結びつけていく。
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