研究課題
本研究は,災害等の不安定なアクセスネットワーク状況下において,情報指向ネットワーク(ICN)をもとにしたネットワークで,要求されるデータを予測し,キャッシュに配備する手法を確立することを目的とする.具体的には,(1)データの発見・予測手法:データの属性を指定できるデータIDの設計と曖昧なデータID指定時の候補データ抽出方式の設計,(2)データの配備・キャシュ手法:データの属性やそれまでの配信状況に応じて,データをノードに配備するデータ配備方式の設計とノードが自律的にキャッシュするデータを決定するデータキャッシュ方式の設計,および(3)提案方式の検証から構成される.平成30年度は,(1)データの発見・予測手法として,データ発見のキーとなるデータ特性情報を抽出するとともに,データIDの構造を整理し,要求時にデータの指定範囲や取得条件を記述できるようにデータIDの表記方法を規定した.データの表記の正規表現を取り入れたり,データの緊急度や確実度をリクエストに付加する方法を提案するとともに,ルータでの処理方式やプロトコルを明確にした.これらについては,シミュレーションにより定量評価を行った(2)データの配備・キャシュ手法として,コンテンツを予配信する方式を提案し,シミュレーションにより効果を確認した. (3)の検証方式については,情報通信研究機構(NICT))の開発した CCN ベースのオープンソースソフトウェア Cefore の導入を検討し,仮想OS環境上で動作できることを確認した.これらの成果について,国際会議2件を含む14件発表した.
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要で示したように,平成30年度についてはおおむね順調に進捗している.当初は情報指向ネットワークのみを対象としていたが,災害時の不安定なアクセスネットワーク環境下においては,耐遅延ネットワーク(DTN)の適用も考慮に入れるべきと判断し,1回あたりのデータの転送量やノードの省電力化についての検討を実施した.また,防災・減災の研究者との議論を進めることで,情報システムで求められる要件を明確にして,本検討をすすめた.今後もこのような議論に基づき検討を進める.
2019年度(令和元年度)は,2018年度の検討に基づき,該当するデータが複数ある場合の要求や,条件に一致しないケースなど様々な状況を想定して,より詳細なアルゴリズムを設計する.また,データキャッシュ方式については,地理的な関係やネットワークの品質などを考慮した,ルーチングテーブル構築や,ノード間のデータ送受プロトコルを設計する.2018年度はシミュレーション中心で評価を進めてきたが,実機による動作検証環境を構築して,小型のノードを用いた実装を行い,提案手法のフィージビリティを確認する.また,デモンストレーションなどの機会をとらえ,一般へのアピールも推進する.学会発表についても引き続き力をいれて進めるとともに,査読論文の投稿を行う.
物品購入費としてワークステーション2台を含む50万円の支出を予定していた.予定ではディプレィの購入も併せて予定していたが,既存設備の利活用が可能であるためディスプレィの購入を取りやめたため,約8万円の余剰金が出た.2019年度はこの金額を繰り入れて物品の購入や旅費として有効に活用したい.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Journal of Disaster Research
巻: 14-2 ページ: 387-404
http://mizunolab.net/