研究課題/領域番号 |
18K11279
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
小池 新 東京家政大学, 人文学部, 教授 (40650445)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 間欠通信 / ロボティクス / オーバーレイノード / 制御情報配信 / 位置情報 / Quality of Control / サービスアーキテクチャ |
研究実績の概要 |
多数のロボティクスデバイスが通信可能区間および不能区間を移動する間欠通信環境で,効率的に情報・コンテンツ配信を実現するシステムアーキテクチャについて,ユースケースを検討することで,具体的な制御との関係性を検討する必要が生じた.特に無線通信環境でのリアルタイム遠隔制御型ロボティクス機器の制御にともなう間欠性の評価がサービス提供のためには不可欠であることを見出した.その点を受けて,主に次の2点の成果を得た. 第一に,具体的なロボティクスデバイス制御の安定性という観点で,通信のカバレッジ外になったという明らかな通信の途絶を伴う環境の場合以外にも,ハンドオーバーを要因とする新たに通信の間欠性問題を起こす状況があることを明らかにした.そしてネットワークの間欠性を評価するための新たな品質尺度の提案を行った. 第二に,間欠通信も含む自動運転車をサポートするネットワークインフラストラクチャの構築を検討し,社会のより広い情報システムの観点から,可能なユースケースシナリオを提示した.具体的にはネットワークが我々の社会を構成する将来のインフラストラクチャの一部というシナリオの元で,カーナビゲーションシステムによる経路決定とネットワークからの測定可能な情報との統合を実現した.この結果,移動する車の将来の場所をより正確に予測できるようになる.この機能をロードサイドに配置された分散キャッシュによるコンテンツ配信に適用すれば,隣接するローカルキャッシュサーバに事前にその車が今後必要となるコンテンツを事前配信することができる.また,間欠通信エリアが存在する場合には,そのセグメントでの通信発生を避けるための戦略の策定が可能となる.このため,移動中の自動車に大きなコンテンツをダウンロードする効果を評価するためのいくつかのスキームを提案して比較した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究計画全体は次の3つの観点としていた: (1) ドローンをはじめとした遠隔操作を必要とする種々のロボティクス機器の,遠隔操作に与える性能要件の明確化や可能性を明らかにすることの検討,(2) ロボティクス機器の制御ソフトウェア構造の分析による,ロボティクス機器から機能として切り出すことが可能なネットワーク制御部分の抽出と,それに基づくアーキテクチャの検討,(3) 様々な間欠的な通信となる環境を想定したネットワークの中で総合的に,連携させた評価を行い,アーキテクチャのさらなる明確化と必要な機能,そしてサービスの実現可能性について検討. この3つの目標のうち2年度分までを以下に示す通り,達成している. 2年目では,間欠通信環境下で効率的に情報・コンテンツ配信を実現するシステムアーキテクチャとして,(1)ロボティクスデバイスが通信可能・不能等多様な通信環境の中で移動する際の,情報配信管理方式の設計および,(2)設計した情報配信管理方式を評価するためのシミュレーションの開発を行った. (1)前年度に検討したドローンによるユースケースに基づく検討では,正常系での動作を念頭にロボティクスデバイスの位置情報をもとに,もっとも近隣のエッジプロキシーを情報配信のための保管転送機能を担うノードとして利用することを想定した.この結果を受け方式設計の際に考慮すべき各種パラメータの抽出を,移動するロボティクス機器の動作への影響評価という観点で行った. さらにそのためのQuality of Controlとそのための評価指標を考案した.(2)また,間欠通信も含む自動運転車をサポートするネットワークインフラストラクチャの構築のための,モデル設計とそのモデルに基づくシミュレーション評価を行い,効率的なコンテンツ配信方式を複数提案し,一次評価を行なった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,間欠通信環境下での効率的に情報・コンテンツ配信を実現するシステムアーキテクチャの詳細化に向けて,(1)ロボティクス機器の遠隔制御との関係をさらに明らかにするともに,(2)間欠通信が発生する状況と,その状況に応じた対策をアーキテクチャと制御方式との両面で検討を行う. (1)前年度に検討した移動するロボティクス機器の無線環境下でのユースケースシナリオの分析によって,多様なQuality of Control(QoC)の尺度が存在することが明らかになった.QoCは,対象とするアプリケーションと間欠性の発生する際の環境に大きく異なる.そのため,可能な限り網羅的にユースケースを考察して,ユースケース毎に必要となるQoCの尺度を明らかにする. (2)また,ロボティクス機器の制御に関する制御理論と,ネットワーク制御に関する理論との統合が必要であることが明らかになってきた.その両者を統合し評価するためのシミュレータを開発し,様々なネットワークアーキテクチャの元で,実際のサービスが可能となるようにする.そしてその成果を利用することで(1)のQoC尺度を明確化することにも適用し,間欠通信に関する統一した理解が可能となるための,サービス運用指針を作成する. 最後にこれらの2つの検討を統合して,様々な間欠的な通信となる環境を想定したネットワークの中で総合的に,連携させた評価を行い,アーキテクチャのさらなる明確化と必要な機能,そしてサービスの実現可能性について検討を行う.これらについて,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は有望なアプリケーションと想定しているドローンの航空管制の動向に関する調査のための人件費支出を計画していた.しかし初年度の研究の進展にともない,無線通信環境でのリアルタイム遠隔制御型ロボティクス機器の制御にともなう間欠性の評価の検討の優先度が増した.そこで,ドローン自身の制御ではなく移動する環境下でのロボティクス機器の制御に焦点を絞りその評価を行うこととした.そのため,調査費の支出が不要となったが,一方得られた成果の発表のために旅費が必要となった.しかし,新型コロナウィルスの蔓延にともない,参加予定であった会議が中止となるなど,見込んだ支出ができず,結果として全体としての支出が減少した.令和2年度は新型コロナウィルスの蔓延により,出張を伴う調査や研究発表が制限されることが想定される.そこで,現在までの成果をまとめることも視野に,間欠通信に関連する文献調査と論文投稿のための費用および,追加もシミュレーションを含む実験に関する費用として利用することとする.
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