2020年度は,研究実施計画に記載の,①「モバイルエージェントの効果的な運用手法の開発」,②「ネットワークの状況を考慮した送信電力制御および通信機能停止制御」,③「送信電力制御および通信機能停止制御を考慮した経路構築手法」のうち,②および③について2019年度の成果を発展させる形式でそれぞれ具体的な手法を提案した. ②では,継続的なネットワーク構成を維持する必要のない耐遅延無線センサネットワークにおいて,送信対象端末の時系列位置情報およびその端末の周囲に存在する他端末情報により送信すべきかの判断を行い,送信対象との距離を基に送信電力を変化させる手法を提案した.本手法により,2019年度に提案した方式と比較して,データ到達率やデータ到達遅延の性能を劣化させずにネットワークの電力消費をさらに削減できることを示した. ③では引き続き情報指向型無線マルチホップネットワークに焦点をあて,シンクと呼ばれる情報集約機器が存在するネットワークおよびシンクが存在しないネットワークの両方に対して2019年度の成果を発展させた. まずシンクが存在しないネットワークにおいて,2019年度に提案した階層クラスタリングおよび送信電力制御を用いたネットワーク構築手法に対して,階層クラスタを考慮したデータキャッシュ手法を提案した.この手法によりこれまでの方式と比較してデータ到達遅延とデータ送信回数を削減できることを示した. 次にシンクが存在しないネットワークにおいて,2019年度に提案したマルチパス送信とオーバヒアリングを利用した方式に対して,データの複製回数と同一データの所持端末数に応じてキャッシュを制御する手法を提案した.本手法によりキャッシュ効率が向上し,データ到達遅延を削減できることを示した.
|