研究課題/領域番号 |
18K11283
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
上山 憲昭 福岡大学, 工学部, 教授 (90710294)
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研究分担者 |
山本 幹 関西大学, システム理工学部, 教授 (30210561)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ICN / キャッシュ制御 / 時系列パタン / ユーザクラスタ / DDoS攻撃 / ホワイトリスト / 可用性 / 拡散 |
研究実績の概要 |
定常的需要に対しミラー配置・FIB選択法を適切に設定するには、将来の定常的需要に基づき制御を行う必要がある。そこでYouTubeのビデオごとの視聴数の時系列データを実測により収集し、スポーツやトラベルといったビデオのカテゴリごとに時系列変化パタンに大きな違いがあることを確認した。そこでビデオが出現してからの時間経過に伴う需要変化パタンや、嗜好の近いユーザグループ内での視聴度合いに応じてキャッシュに残すコンテンツを選択するキャッシュ制御法を検討し、実測した需要の時系列データを用いた計算機シミュレーションを行い、LRUと比較したキャッシュヒット率の向上効果を確認した。またICNではルータのPITの占有率を増大させ、正常ユーザへのコンテンツ配信を妨害するDDoS攻撃が問題となることから、オリジナルホストで実在しないコンテンツ名に対するInterestを受信した際に実在コンテンツ名をホワイトリストとして他ルータに通知し、ルータはホワイトリストに含まれないコンテンツを宛名とするInterestを規制する方式を検討した。またICNで大規模ネットワーク障害発生時に、オリジナルへの到達性が喪失した可用性喪失コンテンツに対し、キャッシュコピーの1つを選択してオリジナルに昇格させることで可用性を回復させる方式と、可用性の回復可能性を向上させるためにオリジナルからの距離を考慮したキャッシュ制御法を検討し、計算機シミュレーションにより両方式の有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各課題に対し、以下の取り組みを行ったが、おおむね計画通りであり順調に進展している。 課題1: YouTubeの各ビデオの1日ごとの視聴数を測定した。そしてビデオが出現してからの時間経過に伴うカテゴリごとの需要変化パタンに基づき、キャッシュに残すコンテンツを選択するキャッシュ制御法と、ユーザを視聴傾向に基づきグループ化し、各グループで人気が高く、かつ今後の視聴が期待されるコンテンツを抽出して優先的にキャッシュに残すキャッシュ制御法を検討した。そしてYouTubeビデオの視聴数の実測時系列データを用いた計算機シミュレーションを行い、これら2つの方式のLRUと比較したキャッシュヒット率の向上効果を確認した。 課題2: ICNでのDDoS攻撃を検知・規制するため、オリジンホストが、実在しないコンテンツに対するInterestを受信した場合にDDoSの発生を検知し、保持するコンテンツをホワイトリストとしてネットワーク上の他ルータに通知し、他のルータはホワイトリストに記載されない全てのコンテンツを宛名とするInterestを規制する方式を検討した。そして計算機シミュレーションによりその有効性を確認した。 課題3: ICNでネットワーク障害時に可用性が喪失したコンテンツに対し、正常に稼働しているルータでキャッシュされているコピーの1つを選択しオリジナルに昇格させることで可用性を回復させる方式を検討した。またコンテンツの可用性回復確率を向上させるため、オリジナルからの距離に基づきキャッシュ判断を行う方式と、その最適パラメタ設計法を検討した。そして計算機シミュレーションによりこれら方式の有効性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
課題1: 需要の推定値、容量制約条件、ミラーの最近接距離の許容条件から、リンク負荷の最大値や分散を最小化するミラー配置とFIB選択法の最適設計問題を定式化する。解を現実的な時間で得るため問題を複数の部分問題に分割し、各々を近似的に算出するアルゴリズムを設計する。そしてYouTubeコンテンツのアクセス数の実計測データを用いた計算機シミュレーションにより有効性を評価する。 課題2: DDoS攻撃を検知した際に、オリジンホストが非規制コンテンツをホワイトリストで他ルータに通知するが、所要メモリ量やルータのホワイトリスト検索処理負荷を低減するためのホワイトリスト検索方式を検討する。そして計算機シミュレーションによりその有効性を確認する。 課題3: ICNのコンテンツの可用性回復確率を向上させるため、オリジナルからの距離に基づきキャッシュ判断を行う際に、同時に平常時のキャッシュヒット率も考慮し、これら2つの尺度を同時に考慮したキャッシュ判断方式を検討する。そして計算機シミュレーションによりこれら方式の有効性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の経費の誤差により,若干の未使用残金が生じた.翌年度の助成金と合わせて,学会主張や研究打合せの旅費として使用する予定である.
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