研究課題/領域番号 |
18K11283
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
上山 憲昭 福岡大学, 工学部, 教授 (90710294)
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研究分担者 |
山本 幹 関西大学, システム理工学部, 教授 (30210561)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ICN / キャッシュ制御 / 時系列パタン / ユーザクラスタ / キャッシュ配置 / キャッシュポリューション攻撃 / 進化ゲーム / IoT |
研究実績の概要 |
定常的需要に対しミラー配置・FIB選択法を適切に設定するには、将来の定常的需要に基づき制御を行う必要がある。そこでビデオのカテゴリごとの視聴数の平均変化率と、各土ビデオの前タイムスロットにおける視聴数との積が大きなコンテンツや、ユーザを視聴傾向の類似性に基づきグループ化し各グループで視聴数が中程度のものを、近い将来に多数の視聴が見込める動画と推定して優先的にキャッシュに残すキャッシュ制御方式を検討した。また突発的需要に対しても安定的なネットワーク運用を行うために、コンテンツとユーザIDの組をキーに用いたブルームフィルタでキャッシュポリューション攻撃を効率的に検出する方式や、動的に変化する需要に対しても経済的なCDN運用が可能となる仮想CDNに対し、経済性の観点からキャッシュの配置位置を選択する方式を検討した。さらに災害時のコンテンツ到達性回復制御を実現するには、災害時の通信手段として有効性の高い無線アクセス回線を利用する無線セルネットワークサービスの健全な発展が必要である。そこで特定のコンテンツのトラヒックを課金対象外とするゼロレーティングの是非を判断するため、進化ゲームを用いてZRを用いるMVNOと用いないMVNOとが混在する市場をモデル化し、実現する状態を分析した。またIoTデータをICNによって配信する際に、データを要約したサマリデータをルータでキャッシュし再利用することで、災害時にもデータの到達性を維持するキャッシュ制御法を検討した。これらの方式の有効性を計算機シミュレーションにより明らかにし、論文誌、国際会議、研究会などで成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各課題に対し、以下の取り組みを行ったが、おおむね計画通りであり順調に進展している。 課題1: カテゴリごとに視聴数の平均変化率を計算し、直前の視聴数との積が大きなコンテンツを優先的にキャッシュに残すキャッシュ制御方式を検討した。またユーザを視聴傾向の類似性に基づきグループ化し、各グループで視聴数が中程度のものを優先的にキャッシュに残すキャッシュ制御方式を検討した。これらの成果を和文論文誌と国際会議に投稿し、採録を果たした。 課題2: 近年、普及が進むAmazon CloudFrontなどの仮想CDNに対し、ユーザの体感品質と配信コストの観点から、コンテンツ事業者の利益を最大化するようキャッシュサーバを最適配置する方式を検討した。成果を英文レター誌に投稿し、採録を果たした。また低人気のコンテンツを大量に要求することでキャッシュに低人気コンテンツを注入し、キャッシュの効果を低減させるキャッシュポリューション攻撃を、コンテンツとユーザIDの組をキーに用いたブルームフィルタで効率的に検出する方式を検討し研究会で発表した。 課題3: 災害時の通信手段として無線アクセス回線を利用する無線セルネットワークが重要であるが、特定のコンテンツ事業者のデータ転送を課金対象外とするゼロレーティング(ZR)を用いる仮想モバイル通信事業者(MVNO)が増えている。一方、ZRは特定の事業者のトラヒックを優遇するためネットワークの中立性に反する可能性がある。そこでZRの是非を判断するため、進化ゲームを用いてMVNO市場をモデル化し、均衡状態を分析した。得られた成果を国際会議に投稿し、採録を果たした。またIoTデータをICNで配信する際に、データを要約したサマリデータをルータでキャッシュし再利用することで、災害時にもデータの到達性を維持するキャッシュ制御法を検討し、研究会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
課題1: 需要の推定値、容量制約条件、ミラーの最近接距離の許容条件から、リンク負荷の最大値や分散を最小化するミラー配置とFIB選択法の最適設計問題を定式化する。解を現実的な時間で得るため問題を複数の部分問題に分割し、各々を近似的に算出するアルゴリズムを設計する。そしてYouTubeコンテンツのアクセス数の実計測データを用いた計算機シミュレーションにより有効性を評価する。 課題2: DDoS攻撃を検知した際に、オリジンホストが非規制コンテンツをホワイトリストで他ルータに通知するが、所要メモリ量やルータのホワイトリスト検索処理負荷を低減するためのホワイトリスト検索方式を検討する。そして計算機シミュレーションによりその有効性を確認する。 課題3: ICNのコンテンツの可用性回復確率を向上させるため、オリジナルからの距離に基づきキャッシュ判断を行う際に、同時に平常時のキャッシュヒット率も考慮し、これら2つの尺度を同時に考慮したキャッシュ判断方式を検討する。そして計算機シミュレーションによりこれら方式の有効性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの感染拡大の影響により,参加を予定していた国内学会が中止となり,そのための出張が取りやめとなったため.
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