研究課題/領域番号 |
18K11283
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
上山 憲昭 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (90710294)
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研究分担者 |
山本 幹 関西大学, システム理工学部, 教授 (30210561)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ICN / キャッシュ制御 / キャッシュポリューション攻撃 / コンテンツポイゾニング攻撃 / アクセス制御 / IoT |
研究実績の概要 |
これまでに検討しているICNとIPルータ間のゲートウェイの簡易な解析モデルによる遅延の解析式を導出し、実機を用いたエミュレーション環境での遅延の測定値と比較し、解析式の有効性を確認した。またIoTのセンシングデータの平均値や標準偏差の演算結果をICNルータにてキャッシュして再利用する方式を検討した。さらに、これまでに検討したブルームフィルタ(BF)を用いたキャッシュポリューション攻撃検知方式を拡張し、BFによる検知回数を一定周期で減算することで、正常ホストが誤検知される確率を低減した。またYouTubeの実際の視聴履歴を用いたシミュレーション評価を行い、正常ユーザが同一コンテンツを反復視聴する可能性を考慮した評価を実施した。さらに公開鍵暗号で暗号化した共通鍵をユーザの要求ごとに配信するICNのアクセス制御方式について、簡易な解析モデルによる遅延時間と制御トラヒック量の導出を行った.またICNでのContent poisoning攻撃の影響が大きくなる偽コンテンツや結託ユーザの配置法を検討し、ネットワークトポロジやキャッシュ方式が本攻撃の効果に与える影響を分析した。さらに任意のICNネットワークを対象とし、各ノードの除去率が与えられた時のコンテンツ可用性を解析的に導出し、ネットワーク障害のパタンや経路候補数がコンテンツ可用性に与える影響を分析した研究成果を海外の高インパクトファクターの論文誌に投稿し、採録された。また要求メッセージおよび応答メッセージに含まれるキーワード(コンテンツ記述子)を基に、コンテンツ要求を解決しコンテンツ配送を実現するキーワード型ICDTNを検討した。これらの研究成果を、国内の学会や国際会議、論文誌で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各課題に対し、以下の取り組みを行ったが、当初の計画以上に進展している。 課題1: IP端末とICN端末との間でtranslationを行うゲートウェイの簡易な解析モデルによる遅延の解析式を導出し、実機を用いたエミュレーション環境での遅延の測定値と比較し、解析式の有効性を確認し、査読付国際会議1件、国内学会3件で発表した。またIoT のセンサ情報の平均値や標準偏差の演算結果をICNルータにてキャッシュして再利用する方式を検討し、成果を査読付国際会議1件で発表した。 課題2:これまでに検討したブルームフィルタ(BF)を用いたキャッシュポリューション攻撃検知方式を拡張し、検知回数を一定周期で減算して正常ホストの誤検知を低減し、またYouTubeの視聴履歴を用いて正常ユーザの同一コンテンツの反復視聴を考慮した評価を実施した。成果を査読付国際会議1件、国内学会2件で発表した。さらに検討中のICNアクセス制御方式の、簡易な解析モデルによる遅延時間と制御トラヒック量の導出を行い、国内学会2件で発表した。またICNで偽のコンテンツを公開しキャッシュの効果を低下させるContent poisoning攻撃に対し、偽コンテンツや結託ユーザの配置法を検討し、成果を国内学会2件で発表した。 課題3: 任意のICNネットワークを対象とし、各ノードの除去率が与えられた時のコンテンツ可用性を解析的に導出し、研究成果を海外の論文誌に投稿し採録された。また災害時に高信頼性通信を目指すDelay-Tolerant Network (DTN)にICNを適用したICDTNでは、コンテンツ識別子ではなく、キーワードを利用したコンテンツ配送を利用する方が適していると考えられる。そこでキーワードを基に、コンテンツ要求を解決しコンテンツ配送を実現するキーワード型ICDTNを検討し、得られた成果を査読付国際会議1件で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
課題1: ICNルータとIPルータとのゲートウェイにおける遅延やスループットを解析的に導出したが、一部でエミュレーションによる実測結果と結果が乖離する現象が見られた。そこでそのような誤差が生じる要因として、ゲートウェイのキャッシュミス時に中央サーバからマッピングデータをゲートウェイが取得するまでに要する時間が解析モデルでは考慮されていない、Delayed cachingが考えられる。Delayed cachingにより、予想していたよりキャッシュヒット率が低下する問題に着目し、Delayed cachingによるヒット率の低下を回避するキャッシュ方式を検討する。 課題2: ICNのアクセス制御方式について、これまで解析モデルによる評価を行ってきたが、実際のネットワークトポロジによる影響を考慮していない。そこで計算機シミュレーションによりトポロジを考慮した評価を行う。またContent poisoning攻撃を防御する方策として、コンテンツをアップロード可能なユーザをBlockchainで管理する技術を検討する。 課題3: 任意のICNネットワークを対象とし、各ノードの除去率が与えられた時のコンテンツ可用性を解析的に導出し、ネットワーク障害のパタンや経路候補数がコンテンツ可用性に与える影響を分析した研究成果を論文化し、海外の論文誌に投稿する。また災害時にUAVを用いて避難者を探索し、発見した避難者に避難物資をUAVで配送するシステムを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナの感染拡大により、当初予定していた海外出張と国内出張が全て中止となった。そのため旅費としての支出を予定した助成金が未使用のままとなった。そのため研究期間を1年間、延長し、次年度は物品費や英文添削費としての支出のウェイトを増すなどの使用計画を考えている。
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