研究課題/領域番号 |
18K11294
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大木 哲史 静岡大学, 情報学部, 講師 (80537407)
|
研究分担者 |
西垣 正勝 静岡大学, 情報学部, 教授 (20283335)
大塚 玲 情報セキュリティ大学院大学, その他の研究科, 教授 (50415650)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 生体認証 / なりすまし攻撃 / なりすまし検知 / Unspoofable Biometrics / 異常値検知 |
研究実績の概要 |
未知のなりすまし攻撃を検知し,あらゆるなりすまし攻撃に対して安全な生体認証方式,UnspoofableBiometricsの開発を行う.まず,生体情報の取りうる分布が個人に依らず同じであり,かつセンサや生体情報取得環境に起因するノイズ(以下,環境ノイズ)の分布も特定の確率分布で表せる,という単純な設定で本技術を開発し,評価実験で有効性を示した.この技術は,「生体情報の確率モデルを求めるメカニズム」と「生体情報の確率モデルと,入力された情報とを比較し,入力された情報が生体であるかを判定するメカニズム」とに分けられる.ここで「生体情報の確率モデル(以下,生体情報モデル)」とは,全人類の生体情報を表す1つの確率分布であり,学習のために全人類の生体情報を収集することは不可能であるが,敵対的学習を用いた生成型モデルの作成手法(GenerativeAdversarialNetwork)等を応用し,限られた生体サンプルからこれを効率的に推定するメカニズムについて検討を行った.また,後者の判定メカニズムの検討にあたっては,未知のなりすまし攻撃を検知できる確率(安全性要件)と生体をなりすましと誤検知する確率(有用性要件)の2つの観点を評価指標とし,これらを最適化する判定メカニズムを求めた.判定メカニズムの評価にあたり,「未知の攻撃への安全性をいかにして評価するか」という点について,理論的観点,および実験的観点の両面から検討を行った.理論的解析により得られた攻撃手法を実験的に確認するために,高精度な加工装置や,簡易な製造方法等を複数利用して,攻撃用のサンプルを作成し,モバイル端末上に実装したなりすまし検知アルゴリズムに対して攻撃・評価を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,未知のなりすまし攻撃を検知し,あらゆるなりすまし攻撃に対して安全な生体認証方式,UnspoofableBiometricsのプロトタイプ開発を行った. まず,生体情報の取りうる分布が個人に依らず同じであり,かつセンサや生体情報取得環境に起因するノイズ(以下,環境ノイズ)の分布も特定の確率分布で表せる,という単純な設定で本技術を開発し,評価実験で有効性を示した.本技術は敵対的学習を用いた生成型モデルの作成手法(GenerativeAdversarialNetwork)を応用し,「生体情報の確率モデル」を限られた生体サンプルから効率的に推定し,新たに入力された情報とこの確率モデルを比較することから,入力された情報が生体であるかを判定するメカニズムである.本技術を実際に撮影した約8000枚の生体画像および約7000枚の偽造物画像を用いて,未知のなりすまし攻撃を検知できる確率(安全性要件)と生体をなりすましと誤検知する確率(有用性要件)の両面から評価することにより,本手法の有効性を示し,この結果を国際会議において発表した.
以上の結果から,当初想定していた技術のプロトタイプ開発は完成したと言え,本研究課題の進捗はおおむね順調に進展していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,生体情報の取りうる分布が個人に依らず同じであり,かつセンサや生体情報取得環境に起因するノイズ(以下,環境ノイズ)の分布も特定の確率分布で表せる,という単純な設定でプロトタイプを開発し,評価実験で有効性を示した.次年度以降は,生体特徴の取りうる分布が個人によって異なるというより現実的な場合に向けて,ユーザーごとに異なるメカニズムを用いるように開発技術を拡張する.生体情報モデルは全ユーザの確率分布の平均として求められたが,現実では,個人ごとに生体特徴は異なることは明らかである.このような問題に対応できるよう,H30年度のプロトタイプで検証したメカニズムを拡張する.さらに,環境ノイズがなりすまし検知結果に影響を与えるという想定の下で,センサの出力結果から環境ノイズによる影響を取り除く手法について検討を進める.これらの拡張により,実用的な環境下においても未知の攻撃に対して正確な検知を行う(有用性・可用性をさらに高める)ことが可能となる.
|