研究課題/領域番号 |
18K11297
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
上繁 義史 長崎大学, ICT基盤センター, 准教授 (00300666)
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研究分担者 |
櫻井 幸一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (60264066)
穴田 啓晃 長崎県立大学, 情報システム学部, 教授 (40727202)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無証拠性 / 耐強制性 / 否認可能 / 認証プロトコル |
研究実績の概要 |
この研究では,「第三者に証拠を入手されえない,ユーザが安心して利用できる認証プロトコルをどのようにすれば構築できるか」を中心的な問いとして,認証に関する通信情報から,必要以上の情報(特にユーザのプライバシ,とりわけ個々人の認証情報)が第三者に証拠として渡らないような認証プロトコルを検討することがテーマである。また,認証後に本人が認証を行ったことを後日否認することが可能な認証プロトコルの検討もテーマである。本年度は以下について成果が上がっている。 (1)認証の無証拠性と耐強制性に関する定義を行った。遠隔での認証プロトコルにおいて,通信情報から,利用者についてどのような情報が収集可能かを明らかにする必要があると考えられる。そこで認証プロトコル一般において,何が証拠となり得るか,証拠が得られる場合にどのような悪用が考えられるかを理論的に検討し,無証拠性の定義について提案した。無証拠性の考え方から論理を展開して,耐強制性の定義を行った。 (2)匿名性と否認可能性が可能な匿名否認可能認証を構築する方法を提案した。匿名性と無効化を同時に実現する,暗号を用いた認証の仕組みについて,安全性の定義を行った上で,匿名否認可能述語認証スキームの発展形として提案している。 (3)ブロックチェーンを用いた電子投票における無証拠性と耐強制性の研究を評価し,耐強制性を保証することが困難なケースが多いことが分かった。電子投票の近年の研究事例のうち,ブロックチェーン(仮想通貨で用いられている)を利用した電子投票方式11件について比較検討を行い,その多くで無証拠性の議論はあるものの,耐強制性の保証が難しいことが判明している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目下,否認防止に関連する認証プロトコルの設計に必要な述語スキームの検討が進んでおり,すでに理論的なプロトコルの例を提案するに至っている。 現時点で,無証拠性及び耐強制性を有する認証プロトコルの開発が遅れている。そのフレームワークと具体的な認証方法の検討が喫緊の課題となる。この部分は令和2年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,無証拠性及び耐強制性を有する認証プロトコルの開発を急ぐため,プライバシー性に関する評価基準等の検討を行う。その上で,より大規模な認証機構への応用を想定した認証のフレームワークについて検討を行う。そのフレームワーク上で無証拠性と耐強制性をもつ認証プロトコルの開発を進める。 また,否認防止に関連する認証プロトコルの安全性の検証,プロトコルの改善等を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度末の時期に研究会がオンライン開催になるなど,旅費の支出計画を変更する必要が生じたため,次年度使用が生じることとなった。 次年度において,学会参加費等の支出に充当することを計画している。
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