音響データへの情報秘匿(ステガノグラフィ)の有無を、秘匿方法が未知のまま情報秘匿前の元信号なしにブラインド検知するステガナリシス技術を開発することを、本研究の目的とした。最終年度は、これまで検出が困難とされている Steghide ソフトウェアによる秘匿を対象として、IEEE Dataport にて公開されている音楽信号データセットである Audio Steganalysis Dataset に対して、従来法およびその改善手法を用いて、情報秘匿の有無を検出することを試みた。また、Linguistic Data Consortium が配布している英語音声信号データセットを対象としても、同様な検討を行った。その結果、振幅が小さい(16ビット量子化における8ビット程度の振幅)区間を持たない音響信号に対しては、秘匿の有無を検出することはできなかった。 研究期間全体を通じた研究成果をまとめると、1)音声および音楽信号においては、最高周波数領域の振幅変動統計量を用いたステガナリシス手法が有効であること、2)前項において振幅が小さい領域を持たない音響信号に対しては同手法が無効であり、ステガナリシスを行う以前にそのような信号を検出可能であること、3)16ビット量子化音響信号の最下位ビット値を上位ビット値をある程度予測することができること、4)前項を用いて最下位ビット値に情報が秘匿されているか否かを検出することは不可能であること、5)代表的な音声符号化方式であるAMR音声符号化におけるピッチディレイデータへの情報秘匿に対しては、ピッチ量子化データの偏りを基にステガナリシスが可能であること、である。
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