研究実績の概要 |
日対話型マルチパーティ計算に関しては,昨年度行ったFPGA実装(VHDLによる実装)に加え,ソフトウェアでの実装を行った.本研究で提案した方式は,通信量は多いものの非対話型であり,また必要な演算は有限体上の乗算と加算のみであるため,演算自体は高速であり,データ通信を行うための速度が律速となることが確かめられた.
また,ユーザ間で通信を行わずにプロトコルにおける不正を検出する方式として2019年に国際会議 NISS 2019 (International Conference on Networking, Information Systems & Security)で発表された不正検出可能な秘密分散(CDSS: Cheating Detectable Secret Sharing)に対する攻撃法を提案した.NISS 2019で発表されたCDSSは,不正の検出にユーザ間の通信が不要なだけでなく,不正検出のための演算が加法群 Z/nZ 上の加算だけで構成されており計算効率の良い方式であった.しかし,従来から有限体上の加法だけで構成するCDSSは安全ではないことが知られており,有限体上の加法と類似した構造を有する Z/nZ 上の加法だけで構成された方式も十分な安全性を有しているとは考えづらい.本研究では,特定の値に関して,Z/nZ 上の加算と有限体上の加算が高い確率で一致することを示し,その数学的性質を利用して,確率 1 でNISS 2019で提案された方式を攻撃(不正を検出されずに意図した値と異なる秘密に復元させることが)可能であることを示した.
昨年度まで行ってきた小型ロケットや小型人工衛星の通信において,複雑なユーザ間通信を行わずに通信の秘匿および認証を行う方式に関しては,提案プロトコルで高速通信を行う際に問題となる比較的低速なストレージから鍵を読み出す方法について検討した.
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