研究課題/領域番号 |
18K11306
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研究機関 | 情報セキュリティ大学院大学 |
研究代表者 |
土井 洋 情報セキュリティ大学院大学, その他の研究科, 教授 (70338656)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 秘密分散法 / 階層型秘密分散法 |
研究実績の概要 |
近年,インターネットを利用した様々なサービスが提供されている.例えば記憶領域を提供することを主とするサービスを考えた場合,情報のライフサイクル(生成,活用,消去)という観点から解決すべき問題は少なくない.(k,n)秘密分散法を用いて与えられた情報からn個のシェアを生成する場合,n個のうちk個以上のシェアを用いることで情報を復元でき,k個未満のシェアからは情報を復元できないという性質を得ることができる.この結果,シェアの紛失や漏えいへの耐性は向上するが,情報の消去には多数のシェアを消去する必要が生ずる.本研究では,秘密分散法,特に消去容易性の達成も見込める階層型秘密分散法等に注目し,その高速化と様々な技術への適用に関する研究を推進する.この実現により,クラウド上などに格納した情報の守秘,利活用と消去等を含む様々な処理に関して,利便性とセキュリティを高めることができる. 令和2年度は,令和元年度までの研究成果であるXOR演算を多用する(k,n)秘密分散法の理論的な分析に関する研究をさらに推進し,その成果を Journal of Information Processing (JIP) で発表した.なお,この成果はXOR演算を多用する(k,n)秘密分散法のシェアの生成や復元を行う行列を,巡回行列を成分とするVandermonde行列とみなすことを可能にする.このことを利用して,階層型秘密分散法において,n=7のときに識別子の割り当て方によっては復元できないこと,逆にn=5のときには識別子の割り当て方によらず復元できること,の理論的な説明に成功した.その成果を国内で開催された2021年暗号と情報セキュリティシンポジウム SCIS2021 で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,秘密分散法,特に消去容易性の達成も見込める階層型秘密分散法等に注目し,その高速化と様々な技術への適用に関する研究を推進している. 令和2年度は,令和元年度の研究成果であるXOR演算を多用する(k,n)秘密分散法の理論的な分析に関する研究をさらに推進し,その成果を Journal of Information Processing (JIP) で発表した. また,この結果はアクセス構造が複雑なXOR演算を多用する階層型秘密分散法へも適用可能である.実際,平成30年度(初年度)までに得られたアクセス構造が複雑なXOR演算を多用する階層型秘密分散法の理論的な分析を推進し.n=5,7の場合における識別子の割り当て方と復元可能性に関する理論的な説明に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,秘密分散法,特に消去容易性の達成も見込める階層型秘密分散法等に注目し,その高速化と様々な技術への適用に関する研究を推進している.この実現により,クラウド上などに格納した情報の守秘,利活用と消去等を含む様々な処理に関して,利便性とセキュリティを高めることができる. 平成30年度(初年度)はIDAを利用する階層型秘密分散法や,XOR演算を多用する階層型秘密分散法について研究し,高速化については一定の結果を得ることができた.令和元年度は,XOR演算を多用する(k,n)秘密分散法の理論的な分析を行い,巡回行列を成分とするVandermonde行列との関係を示すことができた.令和2年度は,前年度の成果をアクセス構造が複雑なXOR演算を多用する階層型秘密分散法へ適用し,n=5,7の場合における識別子の割り当て方と復元可能性に関する理論的な説明に成功した.令和3年度はこれらの成果をもとに,識別子の割り当て方に関する理論的な分析や検証,および様々な機能拡張や応用等について引き続き研究を継続する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を国内の研究会やジャーナル等で発表しているが,その一部が令和3年度以降になったため.また,令和2年度は当初の想定より理論的な研究に重きを置く結果となったため. 令和3年度は,令和2年度までに得られた様々な結果をもとに研究を進める.それに伴い国内研究会,国際会議,または学術論文誌等での発表に関する使用を予定している.また,識別子の割り当て方に関する理論的な分析や検証,および様々な機能拡張や応用等に関連する使用も予定している.
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