研究課題/領域番号 |
18K11308
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤野 毅 立命館大学, 理工学部, 教授 (60367993)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 計測セキュリティ / タイムオブフライト方式 / 耐タンパ測距手法 / センサフュージョン / 車載セキュリティ / ディープラーニング |
研究実績の概要 |
IoT 機器に使われているコンピュータは,「機器の種類や用途が多様」「PC やスマートフォンと比較すると,計算リソースが格段に少なく,セキュリティ対策が困難」かつ「自動車や社会インフラへのハッキングは,生命の危機や社会全体に与える影響が甚大」であるため,サイバー攻撃の危険性が高まっている.これらのセキュリティ対策として,IoT 機器に使用される基本ソフトウェアのセキュアアップデートや通信ソフトプログラムのセキュアコーディング,通信の暗号化などが具体的な対策として実施されつつある. 本研究計画で提案するセキュリティは,前述のセキュリティ対策とは異なっており,IoT 機器がセンサによるデータ取得・収集をする段階のセキュリティ対策を研究ターゲットとしている.具体的には,以下3つのサブテーマを研究し,センシング段階の攻撃を防止するセキュリティ対策技術となりうることを明らかにする. (1)タイムオブフライト(ToF)方式測距センサにおける耐タンパ測距手法:センサ自身が発生した超音波と,攻撃用超音波スピーカーが発信した超音波を区別することができる手法を提案し,その効果を検証する. (2)センシング値の時系列変化を用いた攻撃検知:センサを用いて,連続センシングしている際の測距値や速度をディープラーニングで学習することで異常値が測定された場合に攻撃を検知する手法を検討し,その効果を検証する. (3)異種のセンサを用いたセンサーフュージョン:赤外線カメラと可視光カメラという2つの画像や,超音波センサとLIDARといった異種のセンサをディープラーニング技術を用いて,高精度にセンシングする技術を構築し,同時に悪意ある攻撃に対する耐性を検証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)タイムオフフライト(ToF)方式測距センサにおける耐タンパ測距手法 センサ送信部において発生する超音波に対して,攻撃者が送信間隔を予測できない2種類のランダムパルスを送信する手法の研究をおこなった.センサ自身が発生した信号と受信波との相関を求め,相関の高くない受信波を得た時には攻撃波であると判断する手法を用いて,耐タンパ測距手法を実現した.成果を2019年3月の国際会議で"Study of Ultrasonic-Range-Sensor System with Resistance to Spoofing Attack"というタイトルで発表した. (2)センシンク値の時系列変化を用いた攻撃検知 超音波測距センサおよび本研究費で購入したLIDARの測距値の時系列変化を入力として,カルマンフィルタによって次時刻の測距値を予測し,攻撃を検知する手法の実測による検証を行なった.また,2種類の測距センサの値が異なる時に,「信頼度」を用いて攻撃を回避する新たな手法を提案した.成果を2019年3月の国際会議で"Study of Countermeasure Using Time-Series Data against Physical Spoofing Attack on Range Sensor"というタイトルで発表した. (3)異種のセンサを用いたセンサーフュージョン 可視光カラーイメージセンサと遠赤外線画像センサを用いた画像を同期して撮影するシステムを構築した.このシステムを自動車のルーフに搭載して撮影を行い,2種類の画像を用いたディープラーニングによるセンサフュージョンで夜間でも人物の認識精度が向上することを確認した.成果を2018年5月の国内会議で「深層学習技術を用いたRGB-FIRカメラセンサフュージョンによる車載向け物体認識」というタイトルで発表した.
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今後の研究の推進方策 |
(1)タイムオフフライト(ToF)方式測距センサにおける耐タンパ測距手法 本研究サブテーマに関しては,順調に推移し,査読付き国際会議で発表したことで当初の目標を達成したと考えている. (2)センシンク値の時系列変化を用いた攻撃検知 本研究サブテーマに関しては,測距センサに関してはディープラーニングの適用が未完となっている.一方,車載ネットワーク(CAN)に流れている,計測データである車速データに対して,ディープラーニングを用いて攻撃検知をする手法を並行して研究している.ディープラーニングのモデルとしては時系列データの解析に適したRNNを用いており,異常ななりすまし車速データがCANパケットに流されても,スピードメータになりすまされたスピードが表示されない様にすることが可能である.2018年5月の国内会議で原理と効果を発表し,2019年1月の国内会議では,Raspberry Pi上にRNNを実装することで,スピードメータへのなりすまし攻撃をリアルタイムに検知・排除することができることを発表した.今後はこの開発したシステムにディープラーニングの一種であるAutoEncoderを用いて,攻撃検知をより高精度に行う手法を継続検討する. (3)異種のセンサを用いたセンサーフュージョン 本研究サブテーマに関しては,可視光画像と遠赤外線画像をリアルタイムに同期して撮影するシステムの構築がおわり,両方の画像をセンサーフュージョンすることで夜間でも人物の認識精度が向上することを確認できたが,今後国際学会での発表にむけたサンプル画像の拡充ならびにシステムの改善をおこなう.さらに悪意ある攻撃に対する耐性を検証するために,可視光をもちいたAdversarial Exampleの作成を開始している.
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