センサの情報を取得し動作の判断するような機器において,改ざんやなりすましなどがない正しいデータをセンサから取得することは,システム全体の信頼性にとって非常に重要である.例えば自動運転を例にとると,走行車両や道路監視システムが周囲の人や車両を正確にセンシングすることができなければ重大事故につながる.本研究では,機器におけるセンシングのセキュリティに焦点を当て,悪意ある攻撃により計測の不能化や計測値の改ざんを生じさせないようにすることを目的とした.具体的には,車両に搭載される測距センサ(超音波・レーザー)やカメラ(可視光・赤外線)に対する悪意ある攻撃を検証し,耐タンパ測距手法,攻撃検知手法,センサーフュージョン手法等の耐タンパセキュアセンシング技術の研究を実施した. 具体的には,以下3つのサブテーマを研究し,センシング段階の攻撃を防止するセキュリティ対策技術となりうることを明らかにした. (1)タイムオブフライト(ToF)方式測距センサにおける耐タンパ測距手法:センサ自身が発生した超音波と,攻撃用超音波スピーカーが発信した超音波を区別することができる手法を提案し,その効果を検証した. (2)センシング値の時系列変化を用いた攻撃検知:センサを用いて,連続センシングしている際の測距値や速度をディープラーニングで学習することで異常値が測定された場合に攻撃を検知する手法を検討し,その効果を検証した. (3)異種のセンサを用いたセンサーフュージョン:赤外線カメラと可視光カメラという2つの画像をディープラーニング技術を用いて,高精度にセンシングする技術を構築した. さらに発展的な成果として,自動運転車において必須のセンサデバイスであるLIDARにおいて,測距値を改ざんすることで自己位置推定や地図作成を誤らせる攻撃手法の研究を行った.
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