研究課題/領域番号 |
18K11309
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
酒澤 茂之 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (80530823)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ディープラーニング / 著作権保護 / 電子透かし / 視覚的検出 |
研究実績の概要 |
本研究では、学習済みディープラーニング(深層学習)モデルの無断利用を防ぐために、その所有権を明らかにする技術手段として「電子透かし」のモデル内への埋め込みに取り組んでいる。深層学習モデル内のフィルタ係数群に対して、本来のタスクに影響を与えないように改変を加え、それらを検出することで所有権を示すものである。研究内容として、(1)畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を対象とした、様々なパラメータの下での電子透かし埋め込み検証、(2)電子透かし攻撃の脅威評価、(3)対象とするニューラルネットワークの種類の拡張、(4)プロトタイプソフトの公開、を挙げている。
2020年度は、深層学習モデル内のフィルタ係数群は観測できない”black-box”型についての研究をさらに進展させ、2019年度時点での表現可能なロゴが10x10であったものを31x31あるいは20x50のように、ロゴの画素数が1000まで表示可能となった。この研究成果は、2021年2月に開催された情報処理学会オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)研究会において発表した。この発表は、AVM賞優秀賞の授与が決定した。(受賞日は、2021年6月24日)。さらに、”white-box”型 (深層学習モデル内のフィルタ係数群が観測できる)についても、深層学習モデルの複雑度による電子透かし埋め込み影響の評価に関する研究成果を2021年2月の情報処理学会AVM研究会において発表した。また、これまでの研究は画像認識に多用されるCNNが対象であったが、テキスト情報や時系列信号に適用されるRNN深層学習モデルに対する電子透かし技術の研究を開始し、電子透かしの埋め込みが可能であることを示す研究成果を得た。この結果も2021年2月のAVM研究会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を対象とした、様々なパラメータの下での電子透かし埋め込み検証、(2)電子透かし攻撃の脅威評価について、CNNモデルの複雑度による違いの評価を行い、AVM研究会での発表を行っている。(3)対象とするニューラルネットワークの種類の拡張についてもRNNモデルに対して、"white-box"型によって電子透かしの埋め込みと検出が可能であり、かつ、RNNモデルの性能に大きな悪影響をもたらさない方式を提案し、AVM研究会での発表を行った。 2018年度から新たに取り組んだ”black-box”型での視覚的なロゴ表示については、表現可能なロゴが10x10画素から31x31画素へと拡張され、これもAVM研究会での発表を行い、AVM賞優秀研究賞の授与が決定した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究題目である「ディープラーニングに対する電子透かし埋め込みに関する研究」の枠内で、現在の研究トレンドである”black-box”型において、統計的かつ視覚的な検出が可能な電子透かし技術にさらに注力する。得られた成果は、当初の計画通り、プロトタイプソフトウェアの公開まで達成する予定である。また、RNNモデルへの電子透かし埋め込みも攻撃耐性の評価など、さらに研究を深めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、計画していた出張の取りやめや縮小により、支出が減った。2021年度では、感染状況を勘案しつつ、計算機資源の調達に充当し、考案方式のさらに幅を広げた実験と評価に資することとする。
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