研究課題/領域番号 |
18K11314
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
浅野 泰仁 東洋大学, 情報連携学部, 教授 (20361157)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 協調型交通 / グラフアルゴリズム |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き,協調型輸送・協調型交通のモデル構築およびその実装,そして性能検証実験を行った. 協調型輸送については,これまで,中継(荷物を中継しながら複数の輸送者が運ぶこと)オンデマンド市街地配送モデルについて,新しい効率化手法を構築してきたが,今年度はさらに市街地をモデル化した道路ネットワークデータを用いて,市街地規模で想定される配送スケジュールに実用可能な速度が出るかどうかの性能検証実験を行った.また,市街地配送にも応用可能なネットワークアルゴリズムの実験検証を他種データ(遺伝子ネットワークデータ)に対して行い,予備的な成果を査読付き国際会議BIBM 2021に投稿し採録された.これらの結果をまとめた論文を現在執筆中であり,令和4年度に査読付き論文誌に投稿予定である. 協調型交通については,これまで複数のプロバイダがアライアンスを構築してデータ統合を行うモデル(調停者モデル・プロバイダモデル・ユーザモデルの3種類)を北京大学の胡教授,大阪大学の鬼塚教授,京都大学の吉川教授らとともに構築してきたが,今年度は,分散データ統合およびトランザクションの機能を実装したDejimaアーキテクチャを用いてデモシステムを実装した.このデモシステムを用いて,協調型交通に欠かせない,車両の予約・送迎・賃走等のサービスに相当するデータ更新トランザクションが,複数のプロバイダのデータに対して想定通りに稼働することを確かめた.さらに,上記の共同研究者らとこのモデルに基づく大規模なトランザクション実験による性能検証を含む成果を論文にまとめ,国際会議SIGMOD 2022に投稿した. また,前述のアライアンスデータ統合モデルをさらに発展させ,階層型アライアンスモデルを提案し,既存アーキテクチャによる実現性および問題点を議論した.この成果は国際ワークショップSFDI 2021の招待論文として採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
協調型輸送・協調型交通のモデルについては,令和3年度までに以下の成果が得られており,おおむね順調と言える. (1) 中継を考慮した協調型輸送モデルについて,少人数・少数の荷物に関する厳密解法と,より規模の大きい市街地配送における近似解法とその効率化手法の提案および性能検証実験 (2) 定期利用データを重視したオンデマンドバスのスケジュール設計手法と,その有用性の検証 (3)道路ネットワーク上の位置情報プライバシー保護手法の構築と有用性検証実験 (4)協調型交通のための複数プロバイダアライアンスによるデータ統合モデルの提案およびデモシステムの実装,検証実験
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今後の研究の推進方策 |
協調型輸送については,市街地配送の提案手法についてさらに検証実験を行い,結果をまとめて査読付き論文誌に投稿する. また,協調型交通について,以下の研究を行う予定である.まず,複数プロバイダアライアンスによるデータ統合モデルは,今回デモシステムを実装した調停者モデル以外についても実装を行う.また,階層型アライアンスモデルや,既存ローカルシステムとデータ共有の独立性(分離可能性)などのデータ統合のプラットフォーム化に必要な条件等の理論構築を行う.これらの成果をまとめて査読付き国際会議等に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
協調型輸送について,市街地配送の提案手法についてさらに検証実験を行う必要が出たことと,協調型交通における複数プロバイダアライアンスによるデータ統合に関して今回デモシステム実装を行った調停者モデル以外のモデルの実装とが必要になったため,次年度使用額が生じた.使用計画としては,まず,これらの検証実験や実装に必要な記憶装置やモバイル端末,および必要であればシステムUIの外注等による開発を行う予定である.さらに,これらの成果をまとめて査読付き国際会議や論文誌等に投稿するための英文校閲費,掲載料,および国際会議用旅費等も予定している.
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