がんは高齢者では死亡原因の半数近くを占めているが、一方最近の医療技術では発見が早ければ治癒率は著しく改善されている。がん発見のために多くの方法が研究されているが、その中で一度の検査で全身からあらゆる種類のがんを位置情報も含めて検出できるという点で、CT、MRI、PET等による医療画像診断は最も有効と言われている。ところが画像を読み解く専門医(読影医)の数は現在でも不足気味であり、今後の画像の多様化や画質精細化に対しても不安が残る。最近AI(Deep Learning)を用いた診断手法が注目されているが、全身に対する診断を行うには、膨大な数の症例、しかも非常に多岐にわたる「異常」の例をあつめなければならず、現実的ではないと思われる。一方計算機による自動診断では、これまでいろいろな試みがなされたにも拘らず、全身画像からの全タイプのがん診断に対しては、現れる症状の多様性や判断ロジックの複雑性から汎用性の高い成果は得られていない。申請者らは既に読影者のロジック解析を基にPET-CT画像を用いた上半身(頭頸部と胸腔)については良好な成績を持つ自動診断アルゴリズムを開発済である。本研究では、この成果を基に、全身を対象としCTやMRIだけでも自動診断が行える新しい手法の研究開発を目指している。 基本的なアイディアは、(広義の)臓器領域の認識については、熟練読影者が行っている大局的な臓器認識法に従い、さらに境界部の精度を上げるために、動的な閾値変更(DTA)法など申請者らが既に提唱した手法を活用することである。幸い最終年において、ドイツの医科大学、中国の企業、そして我々の3者から成る研究グループが結成でき、当研究のこれまでの成果を生かして、診断支援システムの中国国内での臨床試験研究と製品化研究開発が、今後ただちに行えることになった。その意味で本研究の意義役割は十分にあったと考えられる。
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