研究課題/領域番号 |
18K11323
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
安藤 英俊 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50221742)
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研究分担者 |
鳥山 孝司 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50313789)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GPU / 多相流体シミュレーション / 数値計算 / 可視化 |
研究実績の概要 |
平成31年度は1.深層学習の導入と拡張,2.伝熱と乱流解析の統合を行っていく計画であった. このうち1.は,他分野との共同研究の成果として深層学習を用いた超解像技術を開発していたため,それをベースとしながらさらに最先端技術を取り入れて改良した.さらに本研究独自の数値計算の際に用いる様々な物理量を併用することで,従来の超解像技術にない高精度化のアプローチを取ることが可能になった.これにより一般的な超解像技術を用いるよりも高精度な,多層流体計算に特化した数値シミュレーションの超解像化を可能とした. さらに前年度に開発・実装を行ったGPU上でのフォトンマッピング法による熱輻射計算については,最新GPUアーキテクチャへの対応を更に進めた.さらにモンテカルロ法的な乱数発生方法についても工夫を行ったため,効率よく高精度な計算を実行することが可能になった. これらの改良された熱輻射計算手法を,昨年度開発したAMRとLESのGPU実装と組み合わせることで,GPU上での高速で高精度な伝熱と乱流解析の統合を目指した.基本的には前年度並行して開発を進めてきた両手法であり,それぞれに独自の適合型格子を持つ構造になっていた.これは流体計算における密度分布に基づく適合型格子と,フォトンマップによる熱輻射計算の際のフォトンの密集具合に基づく適合型格子では,空間的な粗密具合が必ずしも一致しないためである.双方の事情を考慮して新たな基準に基づく適合型格子を導入することで,同じシミュレーション空間を共有して効率的な計算が可能となった.今後はさらに深層学習に基づく超解像技術との融合を目指して開発を進めてゆく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に計画していた項目については当初の予定通り,あるいは部分的には予定以上の成果を達成した.前年度に開発・実装したGPU上でのフォトンマッピング法による熱輻射計算においては,最新GPUのアーキテクチャを生かした実装を更に進め,高精度・高性能化を実現した.AMRとLESについては3次元上での実装からフォロンマッピング法による熱輻射と連携した熱流体計算へと拡張し,伝熱と乱流解析の統合を概ね実現した.深層学習による超解像技術については,現段階で世界最先端の手法をベースに,流体計算に固有の情報を付加して活用することで,さらなる高精度化を目指した.流体計算に固有の様々な情報のうち,どれを使うと超解像技術の高精度化に特に有効であるかの検証を今後行ってゆく.これはAMRとLESとの連携が必要である.全体的には概ねスケジュールどおりの進捗状況である.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度には,令和元年度に開発された手法の実装と評価に基づきさらなる改良・拡張を継続する.安藤担分の熱輻射の実装と深層学習の導入については,すでに開発済みの技術に対してさらなる改良と拡張および最適化を進めてゆく.鳥山担当分の数値解析に関しては,伝熱と乱流解析の統合のうえで実実験との比較検証までを目指す.すでにフォトンマッピング法による熱輻射については十分高速で高精度に動作することが確認済みであるが,本年度登場する最新アーキテクチャのGPUの特性を考慮した効率的なアルゴリズムと実装についても検討し,高速化と高精度化を一段と引き上げることを検討する.その上で,一旦実装された伝熱と乱流解析の統合についてもさらなる改良点を探りながら,高速化と高精度化を図ってゆく予定である.深層学習を用いた超解像技術については,一般的な画像に対する技術の精度向上はある程度頭打ちとなっているが,本研究のように数値計算の際に用いる各種物理量を補助的に活用する手法は他にも多くなく,特に多相流の境界付近での急激な物理量の変化を大きなヒントとして超解像計算の高精度化を図ることを更に継続する.最終的な可視化画像を深層学習によって高品位化する手法についても最新技術の改良などに取り組んでゆく.
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