研究課題/領域番号 |
18K11325
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
横川 三津夫 神戸大学, 先端融合研究環, 教授 (70358307)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 部分前処理付き共役勾配法 / PSCCG法 / 地震動応答シミュレーション / ハイブリッド並列計算 / 並列ベクトル計算 |
研究実績の概要 |
建築物の耐震性評価のために,地盤と建物の地震動応答を求める数値シミュレーションが行われている.このシミュレーションでは,有限要素(FEM)による計算格子に対し,各格子点における運動方程式を離散化して得られる疎で大規模な連立一次方程式を解いている.有限要素法を適用して得られる係数行列は不規則行列となるが,建物及び建物と地盤の境界部分に対応する部分行列と地盤に対応する部分行列に分け,コレスキ―法による部分前処理,及びブロック対角行列スケーリングによる部分前処理を適用した共役勾配法(Partially sparse Cholesky conjugate gradient method, PSCCG法)を用いて,逐次計算によって解かれている.コレスキ―法を前処理に適用する部分は行列方程式の直接解法ライブラリIntel MKL/PARDISO が利用されており,ソースコードが非公開のために独自の並列化による改良が困難であるが,その他の部分は並列化が可能である. 本研究では,このシミュレーションコードをマルチコアシステム上で並列化することによって高速化する.2021年度は,並列計算機SX-Aurora TSUBASAを用いて,ベクトルホスト部(VH)及びベクトルエンジン部(VE)によるハイブリッド並列化を継続した.SX-Aurora TSUBASAのVHは,Intelプロセッサで構成されており,PARDISOを利用することが可能である.また,対角スケーリングによる前処理部分や共役勾配法のその他の計算部分はVE部でベクトル計算可能である.改良されたコードによる計算結果が,修正前の計算結果と一致することを確認した.VEでのベクトル化による性能はスケーラブルに向上することを確認したが,VHでの低い計算性能がボトルネックとなり,全体の計算性能は建物部分の解法の性能で抑えられることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算機システムSX-Aurora TSUBASA上で,建物.地盤連成地震動解析の時間発展シミュレーションコードの高速化を継続して実施している. 前年度からのコード修正の継続作業として,VH部とVE部の両方をハイブリッドMPI並列で実行するコードを完成させ,改良前のコードとの計算結果の一致を確認した.昨年度の作業により判明していた性能が不十分である状況について検討した結果,VE部におけるベクトル化による実行性能はスケーラブルに向上していることが分かったが,VH部でのIntel MKL/PARDISOの性能がプロセッサ・コア数に対してスケーラブルに向上していないことが明らかとなった.建物部分に対応する不規則行列に対しコレスキー分解を前処理に用いている計算部分は,数値計算ライブラリを用いており,このライブラリではこれ以上の性能向上は見込めないと考えている.この部分の高速化についての検討が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
建物・地盤連成地震動解析の時間発展シミュレーションコードについて,SX-Aurora TSUBASA のVH-VEハイブリッド並列計算で実行する方法はほぼ習得できた.VHで実行しているPARDISOによる解法を独自にコーディングする方法を検討する予定である.全体の状況がほぼ明らかになってきたので,今年度は最終年度として,得られた成果を公表することとしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】海外での国際会議で発表を予定していたが,新型コロナウィルスによる会議中止により旅費等に余剰が発生したため. 【使用計画】2022年度に開催される国内外の研究集会や国際会議などで成果発表を行う.
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