量子計算には、量子ゲート方式と量子アニーリング方式があり、本研究では量子アニーリング方式を主軸としている。量子アニーリング方式は組み合わせ最適化問題を解くのによく用いられている。近年は、量子アニーリング方式に着想を得た専用計算機も、続々と開発されている。この計算機を使うためには、解くべき問題をイジング模型かQuadratic Unconstrained Binary Optimization (QUBO)形式で定式化する必要があるため、イジングマシンとも呼ばれている。イジングマシンは組み合わせ最適化問題やサンプリングに特化した計算機であるが、本研究ではそれ以外の有用な利用方法についても探究してきた。 イジングマシンを使った研究として、クラスタリングの新たな手法を提案する論文を発表した。従来の方法ではうまくクラスタリングできないデータ分布に関して、提案手法では制度のよいクラスタリング結果が得られることを示した。また、イジングマシンの適用可能性を示す研究として、QUBO形式による圧縮センシングに関する研究を発表した。提案手法によって高い性能が得られる場合もあるが、初期値依存性が大きいことを示した。その他にも、イジングマシンを使った巡回セールスマン問題の解法の提案や、イジングマシンを用いたパターン形成の研究に関しても、研究成果を発表した。 量子計算による量子多体系のダイナミクスの研究として、量子計算を多体局在の判定に使う方法に関する研究も行った。シミュレーションによって、量子計算による多体局在の判定の可能性を検討した。
|