研究課題/領域番号 |
18K11335
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 徹 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90360578)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アイソジオメトリック解析 / 境界要素法 / 周期境界値問題 / Maxwell方程式 / 形状最適化 |
研究実績の概要 |
主たる研究目的であった電磁気学用3次元2周期境界値問題に対するアイソジオメトリック境界要素法(IGBEM)の開発を行った。定式化および解析プログラムの作成・検証を行い、関連学会(「第23回計算工学講演会」および「International Association for Boundary Element Methods (IABEM) 2018)」)において研究発表も行った。現在、当該の内容をもって英文雑誌への誌上発表に向けた執筆活動を行っている。 当該問題に対するIGBEMの構成においてポイントとなるのは、(i)2周期開曲面のB-spline関数による表現、および(ii)擬周期性を考慮したベクトル基底関数の構成の二点である。(i)に関しては研究代表者のグループがこれまでに研究してきた2次元Helmoholtz方程式に関するIGBEMの構成に関して培って来た技術を発展することで解決した。一方、(ii)の解決は、Buffaら(2010年)の先行研究において提案されたB-spline関数に基づく基底関数を参考としたが、解くべき変分方程式を正則化するために必要となる擬周期境界条件を勘案する点は本問題に特化しており、提案したベクトル基底関数はオリジナルなものであると言える。これら(i)および(ii)によって本問題のIGBEMの構成が可能となり、数値解析例を通じて、本IGBEMの妥当性を確認した。また、本研究課題が注目する表面プラズモンに注目した薄型太陽電池の最適設計を念頭に置いて、表面プラズモンの励起に関するシミュレーションも成功裏に実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画段階で導入を考えていた高速化技法である周期高速多重極法(Otaniら, 2018)は現時点では組み込みが行えていない。本IGBEMへの適用は原理的にはOtaniらに従えば可能であるが、細部の定式化と実装は多くの時間を要するものと考えられる。そこで、一旦は高速化すること無しにIGBEMの構築を主眼とする論文の作成に注力することとして、現在に至っている。 一方、2019年度に研究実施予定である形状最適化の前身として、3次元Helmholtz方程式(3次元音響問題)に関する形状感度解析に関する研究を行い、学会および誌上発表を行った。形状最適化についても鋭意研究中である。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、研究計画当初の目的である3次元2周期電磁気学問題に対する形状最適化の定式化およびシステム開発を行う予定である。そのためには、形状感度解析の定式化が必須となる。基本的には2018年度に予備的に行なった3次元Helmholtz方程式の形状感度解析と同様であると考えられるが、自明でない部分も現時点ではある。先行研究のサーベイも行いつつ、当該の定式化を早急に行い、コード開発に移る予定である。なお、上記した周期高速多重極法等によるIGBEMの高速化については、実際の形状最適化を実施を行った段階で、どの程度高速化が必要であるかを見極めてから使用の有無を判断することとする。高速化自体は既存技術であるため、学術的にはそれほど大きなインパクトはないことも一つの理由である。むしろ、マルチコアCPUを用いたマルチスレッド並列化によって代用することが簡単かつ効率的であるとも考えられ、OpenMP等の利用についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現在執筆中の論文作成に関する研究補助として大学院生1名(修士課程最終学年)に謝金を支給する予定であったが、修士研究の整理が3月初旬までかかったことから、当該の論文作成開始のタイミングが3月中旬にずれ込み、結果として、謝金支払い手続きの年度末期限に間に合わなかった。残金は、当該論文作成に必要な文献の購入費として使用する予定である。
|