最終年度は、3次元2周期多層構造系における外部電磁波動問題に関する形状最適化システムの開発行った。研究当初は随伴変数法を用いることを予定していたが、文献を精査したところ、その定式化の要となる形状感度(形状導関数)の導出自体は国外のグループによって行われている事が判明した。その対象とする問題は非周期問題ではあるが、本研究が目的とする周期問題への転用はさほど学術的に新規性がないとの判断に至った。そこで、本システムの構築を急いで、勾配を用いない最適化アルゴリズムの使用へ切り替えた。具体的には、不等式制約条件が取扱い可能な非線形計画問題用アルゴリズムであるCOBYLA法を採用した。構築した形状最適化システムを検証するために、過去に解析した2次元問題と等価な3次元2層構造系(積層方向はz方向)における形状最適化問題を解いた。具体的には、層間の境界形状は平面として、それがz方向にのみ可変できるものとする。この場合、ユニットセル内の平面境界を張る制御点に共通するz座標が唯一の設計変数となる。入射電磁場として、電場が-x方向、磁場-y方向に向くものを選べば、本問題は2次元1周期2層構造系とみなすことができて、その解析解と比較可能である。解析の結果、COBYLA法は13回の反復で収束した(停止条件は目的関数の相対変化率が2ノルムにおいて0.1%とした)。得られた目的関数値は、参照とした2次元問題の場合の値と6桁まで一致した。また、形状変化も参照値と5桁の範囲で一致した。以上より、構築した本形状最適化システムは計算精度の観点から妥当であるとの結論を得た。多層構造における数値解析の実践、および電場波動散乱問題用ソルバとして開発したアイソジオメトリック境界要素法の高速化に課題を残したが、開発した本形状最適化システムは3次元プラズモニクス研究のツールとして有用であると考えられる。
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