最終年度の研究成果として、シミュレーションによって作られた時系列データに対する研究の領域では、動的モード分解(DMD)を利用した運動変化点検出法の確立が挙げられる。自己駆動粒子の集団運動においては、運動が複雑で空間的にも同時に様々な運動が生じている場合があり、DMDをそのまま適用するだけでは明確なモードの分析が難しい。このような系の運動状態を分析するために運動状態の変化点を求める方法として、DMDの再構成誤差を利用した手法をさらに洗練してTime-Shifted DMDという名称で呼ぶこととした。この手法を、不連続な運動変化を生じるように設定した時系列データに対して適用し、高い感度で運動変化点を検出できることを示した。これらの結果は、国際会議録として公開するとともに、交通流と自己駆動粒子系のシンポジウムで成果発表した。 本研究課題の主要テーマである映像からの時系列データの取得とシミュレーションの構築に関しては、研究分担者が実施した物理実験のビデオ映像を利用して研究を実施した。物理実験としては、簡単な一次元自己駆動粒子系として知られている樟脳船を対象とし、ビデオからの運動データ抽出と、時系列分析手法の適用という一連の手順を確認し、データ駆動型シミュレーションに向けての考察を行なった。さらに、誤差を含む時間発展データの分析手法として統計的な手法を導入し、変数間の因果関係の分析を試みた。以上の成果は国内の情報系の学会で発表した。
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