研究課題/領域番号 |
18K11339
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
須賀 一博 工学院大学, 工学部, 准教授 (30408992)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯科矯正治療支援 / 歯の移動予測 / 矯正力評価 / 光学印象 / データ同化 |
研究実績の概要 |
健康長寿社会を実現するために,口腔内の健康を保つことが重要とされている.歯科矯正治療は,口腔内を健康に保つ手段の一つである.本研究では,より安全で効果的な歯科治療を実現するために,力学的な根拠に基づく治療支援システムの開発を行う. 本年度は,効率的な歯の移動予測システムを開発するために,(1)ワイヤーの設置によって生じる矯正力を定量評価するシステムの開発,および (2)矯正力が作用する歯の移動方向を予測する簡略数理モデルを提案を行った. (1)では,以前の研究成果を発展させ,ワイヤーの設置条件や手順が矯正力やモーメントにどのように影響するのか数値実験による評価した.さらに,歯が移動する過程における矯正力やモーメントの変化を予測した.歯科矯正医の協力のもと,予測結果の有効性について検討した.その結果,効果的な治療法に開発に有効であることを確認した.今後は,模擬歯モデルを用いたセンサーによる矯正力評価結果と比較検討を行い有効性を検証する. (2)では,歯の移動予測モデルの精度向上を試みた.予測モデルは,力とモーメントの釣合いから歯の姿勢変化を表現する6変数を同定する最適化問題を解くことで,歯の姿勢を決定している.これまでは,材料定数の非線形性や歯根膜の形状によって精度良く歯の姿勢を予測できない問題があった.この問題を克服するために,最適化手法を工夫した.最適化問題の初期値依存性を克服するアプローチをとることで精度が向上できることがわかった.しかし,実用にはさらなる精度向上が必要なことが分かった.今後は,問題に適した先験情報を組み込むことでさらなる精度向上を実現する. 成果の一部は,国際会議や国内会議などを通じで発信した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯列モデルを用いてセンサーシステムにより得られた実験結果と歯の移動予測システムの予測結果を比較することで有効性を検証することを予定していた.しかし,センサーシステムも研究開発段階にあるため,本年度は検証ができなかった.一方,矯正力評価システムを歯の移動過程に応用できるようにした.さらに,歯の移動予測システムの高精度化を一部前倒しで実現した.以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を応用してデータ同化による歯移動量の定量予測システムの開発を進める.また,一部しか達成できなかった予測システムの有効性検証を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
有効性検証のために行う予定であった実験結果との比較が予定より遅れることになったため,本年度はアルゴリズム開発および改善に注力することになった.そのため有効性検証に利用するために購入予定であった計算機の購入を見送ることになった.以上の理由から,使用額に差が発生した. 有効性検証の実施に合わせて,計算機を購入する費用として使用する予定である.
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