研究課題/領域番号 |
18K11343
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
宮田 考史 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (90581645)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 計算科学 / 高速高精度アルゴリズム / 固有値問題 |
研究実績の概要 |
本研究は、計算科学に現れる大規模固有値問題を高速高精度に解くためのアルゴリズムの研究を行う。本年度は、以下の研究に取り組んだ。 (1) ネットワーク解析に現れる大規模固有値問題を高速に解くための反復アルゴリズムの開発を行った。数値実験の結果、提案法は既存のアルゴリズムに比べて速い収束性を示した。提案法をさらに高速化するため、並列計算機に適したアルゴリズムへの改良に取り組んだ。具体的には、リンク構造を考慮することで、一反復あたりの計算量が各演算コアで均等に近くなるようにアルゴリズムを修正した。本アルゴリズムを並列計算機上で実装し、数値実験を行った結果、より少ない計算時間で大規模固有値問題を解くことができた。 (2) 大規模な一般化エルミート固有値問題を解くための反復アルゴリズムの開発に取り組んだ。本問題は、電子状態計算や構造解析に現れる主要な工学問題の一つであり、高速高精度なアルゴリズムが求められている。本研究では射影法に基づく反復法の開発に取り組み、少ない反復回数で精度の良い近似解へ収束させることを目指した。具体的には、近似解の精度を改善するための修正量を定式化した。さらに、反復毎の計算量を減らすため、修正量の近似計算手法を導入し、全体として複数の反復計算を交互に繰り返すアルゴリズムを構成した。数値実験の結果、既存のアルゴリズムよりも提案法は速い収束性を示し、高速に一般化エルミート固有値問題を解くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネットワーク解析に現れる実際問題を解くための高速アルゴリズムを開発した。また、問題の特徴を利用することで、並列計算機の性能を引き出すための工夫を行った。並列計算機上で提案法を実装して数値実験を行い、提案法の有効性を数値的に示した。また、より広い応用問題に現れる一般化エルミート固有値問題に対して、数理的な工夫を行い、独自の高速アルゴリズムを開発した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、大規模固有値問題を高速高精度に解くためのアルゴリズムの研究を行う。今後は、より実用的なアルゴリズムに発展させるため、アルゴリズムの性能を左右するパラメータに対し、最適に近い性能を発揮するような組み合わせの検討を進める。また、並列計算機の性能を引き出すため、同期時間等の並列化コストを削減し、より高速なアルゴリズムの開発に取り組む。
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