研究課題/領域番号 |
18K11346
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
長谷川 まどか 宇都宮大学, 工学部, 教授 (80322014)
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研究分担者 |
篠田 一馬 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (50639200)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 画像解析 / ミツバチ / 巣 / 機械学習 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
本研究では、養蜂用西洋ミツバチの巣房状態の把握と生育管理への利用を目指し、巣脾を撮影した画像から巣房の状態を機械学習等を用いて自動判別する方法の検討を行っている。研究2年目である本年は、(1)巣脾画像データの拡充、(2)前処理用画像強調手法の検討、(3)機械学習による自動分類法の検討を実施した。 (1)の巣脾画像データの拡充では、6000×4000画素の高解像度カメラおよび近赤外線領域の撮影が可能なマルチスペクトルカメラを用いて、月2回継続的に撮影を行い、千枚弱の画像データを収集した。高解像度撮影により、蜂の卵や、孵化したばかりの幼虫など微小な物体をある程度とらえることができ、今後の画像認識へ繋がるデータが得られた。ただし、光源位置や育房壁の影などの影響で、画像を目視しても判別が困難なケースも多いことが分かった。撮影方法の改善を今後も継続する。 (2)の前処理用画像強調手法の検討では、色相を変化させることなくコントラストを改善する手法および画像に付加情報を埋め込む手法の検討を行った。この成果は、国際会議IMQA2020に論文として採択された。 (3)機械学習による自動分類法の検討では、画素単位で畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて分類する手法およびSingle Shot Multi Box Detector(SSD)を用いて巣穴単位で分類する手法の検討を行った。CNNを用いる手法では平均再現率が92%程度と高いが、一つの育房内に異なるクラスが混在する問題がある。一方、SSDでは、平均再現率は82%と低いが、育房単位で判別できる利点がある。今後、両者の特徴を考慮しながら、引き続き認識精度の向上を図る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蜂巣画像データの収集は順調に進んでおり、RGB画像については良好な成果も出てきていることから、おおむね順調に進展している。画素単位での育房領域の分類法については、画像電子学会年次大会において成果発表し、研究奨励賞を受賞した。近赤外撮影画像の解析については、検討の結果、現存の装置は解像度が低く、かつ、養蜂場のような屋外で撮影すると育房状態の判別が困難になる場合が多いという問題点が明らかとなった。このことから、今後は対象をRGB画像に集中して検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、画像の前処理の改良と育房状態の自動分類法の更なるブラッシュアップを図る。昨年の自動分類の検討では、画像を300×300画素の独立なブロックに分割したのちにSSDで処理を行っていたため、ブロック境界が分類されないという問題が残されていた。そこで本年は、互いにオーバーラップするブロックに分割し、SSDで分類後、その結果をマージする処理の検討を行う。また、前処理のコントラスト強調においては、協調によってノイズが顕在化する問題明らかとなったため、ノイズを抑制可能なコントラスト強調法の検討を進める。 また、本手法の応用として、農薬が蜂の成長に及ぼす影響の定量的評価の支援を目的とし、蜂巣を撮影した画像から有蓋育房領域面積を計測するアプリケーションの構築を目指す。有蓋育房の判別はこれまでの研究成果を発展させることで実現できると考えている。 さらに、近年、ミツバチヘギイタダニの寄生が問題となっていることから、蜂巣を撮影した画像を解析し、ダニの数を計測する手法への発展も検討する予定である。ミツバチ、ダニともに茶褐色であることから、色彩に依存した方法だけでは検出が困難であると予想されるため、輪郭検出処理と組み合わせた手法を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表の旅費に使用する予定であったが、コロナ禍により出張がキャンセルとなった。次年度の論文投稿費または物品費に使用する予定である。
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