研究課題/領域番号 |
18K11347
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平井 経太 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30583405)
|
研究分担者 |
堀内 隆彦 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30272181)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 分光プロジェクションマッピング / 構造色 / 蛍光発光 / 分光計測 / 形状計測 |
研究実績の概要 |
本研究では,応募者らが先行研究において構築した分光プロジェクタの実応用として,物体表面における光反射特性の新たな計測手法の確立を目的とする.さらに,分光プロジェクタを用いた物体表面への重畳投影(プロジェクションマッピング)により,実物体の見えを操作する新たな技術基盤の構築を実施する. プロジェクションマッピングは,物体表面に塗装や加工を施すことなく見えを操作することができるため,エンターテイメントのみならず,商品開発シミュレーション等の幅広い専門分野で使用されている.しかしながら,従来のプロジェクションマッピングではRGBプロジェクタを用いており,構造色や蛍光発光を含む物体の分光的な見え操作を行うことは不可能であり,リアルな再現は困難であった.そこで,申請課題のR1年度の研究では,著者らが開発した分光プロジェクタを用いて,構造色および蛍光発光の光学特性を計測するとともに,その計測データをもとに,分光的に操作するプロジェクションマッピング技術の構築した. 提案手法の検証実験において,実際の蛍光物体・構造色物体と分光プロジェクションマッピングを行った蛍光物体・構造色物体の分光計測を行い,それらの分光分布や色差を比較した.実験結果より,分光プロジェクションマッピングによる見えは実際の数値的に近い結果が得られ,提案手法の有用性が示された. これらの成果は,国内学会にて発表済であり,現在,国際会議や学術論文誌への論文投稿の準備中である. また,R1年度の実験では,比較的,立方体や円柱などの単純な立体物の分光計測・再現を実現したが,R2年度にむけて,より複雑な形状の対象とした計測・再現にも着手しはじめた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では当初計画では,以下の課題解決に取り組む予定となっていた.(1)H30年度:分光プロジェクタ・カメラシステムの改善,(2)H30年度~R1年度:表面反射特性の計測 (H30年度:蛍光物体,R1年度:構造色物体,肌),(3)R1年度~R2年度:実物体の見え操作(R1年度:蛍光物体,R2年度:構造色物体,肌) 物体表面の光反射計測や実物体の見え操作には,分光プロジェクタ・カメラシステムが必要となる.応募者の先行研究において,一般物体の分光反射率と3次元形状を計測する分光プロジェクタ・カメラシステムを試作した.計測や見え操作を実現するためには各機器と物体間の位置合わせが必須であるが,平成30年度の研究で開発した自動位置合わせ手法の改善を図り,構造色や蛍光発光を有する物体の計測・再現を実現するためのシステムおよび技術基盤を構築した. R1年度は人間の肌を対象にすることを予定していたが,すでにH30年度に実施済みである.一方,蛍光発光や構造色を有する物体の測定・計測は未着手であったため,それらを対象とした基礎技術開発と実験をおこなった.その結果,蛍光発光や構造色の光学特性を計測するとともに,その計測データをもとに,物体の見かけを分光的に操作するプロジェクションマッピング技術の構築した.肌を対象とした研究については,H30年度にすでに目標を達成しており,蛍光発光や構造色を有する物体を対象とした研究についても,基礎研究レベルの成果を得ることができた.また,R2年度は,これらの基礎研究で考案された技術をもちいて,より発展的な研究に展開する. 以上を踏まえ,研究の進捗状況はおおむね順調であると判断できる.
|
今後の研究の推進方策 |
R2年度は最終年であり,以下を予定している. R2年度:複雑な形状をもつ構造色物体・蛍光物体を対象とした表面反射特性の計測と見え操作 構造色物体は,白色光の入射に対して,物体表面での干渉・回折・散乱が生じるため,出射光の波長は空間的な位置に依存する.この光特性の計測・再現・見え操作は,現在,コンピュータビジョンやコンピュータグラフィックスの研究分野で十分な成果が挙げられていない状況である.また,蛍光物体は表面反射光と蛍光発光の両者を有するが,これらは特定の入射波長に対する出射波長の特性が異なる.さらに,蛍光発光は点拡がり関数のような空間的特性をもつ.蛍光物体は,現在,コンピュータビジョン分野で計測・再現に関する研究が積極的に行われているが,プロジェクションマッピング応用を想定した際の基礎技術は確立されていない.そこで,R1年度では立方体や円柱などの単純な立体物を対象とした構造色・蛍光発光の計測と再現を行った.R2年度ではより一般的な形状の構造色物体・蛍光物体を対象とした研究に注力する. また,研究成果の対外発表については,肌の光学特性を計測,および,肌の見かけを分光的に操作するプロジェクションマッピング技術について,R2年度中に学術論文氏に論文投稿する予定である.構造色物体や蛍光物体を対象とした研究についても,R2年度中に積極的に対外発表する予定である.
|