研究実績の概要 |
構造色の特徴を考慮した画像再現を行うために, コンピュータグラフィックス分野において, BRDF (Bidirectional Reflectance Distribution Function, 双方向反射率分布関数)モデルと呼ばれる物体の角度ごとの反射特性を表す関数が提案されている. しかしながら, 実物体の色再現を, このBRDFモデルに基づいて実現するためには, 実際の構造色物体の膜厚や屈折率などのモデルパラメータを推定する必要があった. また, CGによる測色的な構造色再現には, ディスプレイの三原色に基づく再現であるため, 再現できる色に制限があるといった課題や, 標準観察者とは異なる特性を持つ観察者には, 実物と再現された色が違って見える, いわゆる観測者メタメリズムという現象が生じてしまうといった課題があった. 今年度は, 上記の課題を解決するために, 分光計測を用いて薄膜干渉による構造色物体の膜厚と屈折率を推定した. また, 薄膜干渉による構造色物体の形状計測を目標とした法線・膜厚・屈折率の同時推定も行った. さらに, それらの推定パラメータを用いて構造色の分光的な再現を行った. 計測では分光カメラを用いて薄膜構造を有する構造色平面サンプルを撮影した. そして, 撮影画像から得られた反射率とBRDFモデルの反射率との二乗誤差を最小にするような膜厚と屈折率を推定した. さらに, 推定した膜厚と屈折率をBRDFモデルに代入し, 様々な光源入射角度と観測角度における分光反射率をシミュレーションした. この分光反射率をもとに, 角度毎の薄膜干渉による構造色を, 分光プロジェクタを用いて分光的に再現することを試みた.
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