研究課題/領域番号 |
18K11355
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木戸 善之 大阪大学, サイバーメディアセンター, 講師 (70506310)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大規模可視化装置 / シングルボードコンピュータ |
研究実績の概要 |
大規模可視化を実現する装置としてタイルドディスプレイが挙げられるが,高解像度可視化装置の必要性は,災害時などにおける情報共有手段として期待されている.被災情報,避難経路などの情報共有手段として複数人が同時に情報を得ることができるタイルドディスプレイは,一方で構築にかかる機器や設定の複雑性から一時的に組み立てることが難しい. タイルドディスプレイを構成する機器は,ディスプレイノードに高いメモリバンド幅性能やグラフィック表示能力が求められ,比較的高価なPCが必要としていた.一方で,Paspberry Piなどに代表されるシングルボードコンピュータは,PCと同等の性能でありながら,安価なコンピュータとして普及しつつある.シングルボードコンピュータの普及は,PCやワークステーションに置き換わることで消費電力や低コストなどが期待されている. そこで本研究課題においては,安価でかつ設定が不要な一時的に構築するタイルドディスプレイシステムの実現を目指し,3つの課題を設定している.[i]可視化装置構築時におけるOS仮想化技術の広域マイグレーションの実現可能性の検討,[ii]シングルボードコンピュータを用いたタイルドディスプレイシステムの検討,[iii]タイルドディスプレイシステムを実装する上で複雑な設定を不要とするゼロ・コンフィグレーションの実現である.初年度にあたる本年度は,[i][ii]の研究課題,シングルボードコンピュータを用いたタイルドディスプレイの実現について取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[i]可視化装置構築時におけるOS仮想化技術の広域マイグレーションの実現可能性の検討については,OSイメージのマイグレーションをクラスタ環境で実装することにより検証を行った.OSイメージについては軽量OS仮想化ミドルウェアDockerのイメージを想定し,更に今回はヘテロではなくホモな環境として実験を行った. [ii]シングルボードコンピュータを用いたタイルドディスプレイシステムの検討については,シングルボードコンピュータ上にてタイルドディスプレイミドルウェアの実装を目指し,情報共有手段としてのスクリーン共有機能について検討を行った. 情報共有をするためにクライアントのウィンドウをタイルドディスプレイに表示すると,クライアントの性能(解像度)に依存した表示となり,高解像度が表示可能なタイルドディスプレイでは,性能を活かしきれない.本研究では,高解像度な情報共有を目指し,仮想グラフィックメモリ領域を用いたスクリーン共有機能を開発した.これにより低解像度なクライアントからでも高解像度なスクリーン共有機能が実現でき,本研究の目的である,低性能シングルボードコンピュータを用いたタイルドディスプレイシステムの一部が実現できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進においては,[ii]と[iii]について主に推進する予定である.[ii]のシングルボードコンピュータを用いたタイルドディスプレイシステムの検討は,本年度の研究開発において大きく進捗しているが,一部の機能(スクリーン共有機能)に限定しているため,来年度ではさらに拡張を行う. 具体的には,ストリーミング手法の検討を行う.シングルボードコンピュータは主記憶メモリをグラフィックメモリと共有するため,OSの制御にまかせるとスワッピングが発生し,I/Oボトルネックとなる.そこで本研究ではマルチストリーミングを行うようタイルドディスプレイミドルウェアを改良し,シングルボードコンピュータでも遅延なく動作することを検証する. 設定した[iii]タイルドディスプレイシステムを実装する上で複雑な設定を不要とするゼロ・コンフィグレーションの実現では,上述したタイルドディスプレイシステムを[i]のマイグレーション方式により展開を行った後,自動的にタイルドディスプレイ設定を行うことを目指す.具体的には,制御するためのスマートフォンのカメラを用い,格子状に並べたディスプレイとディスプレイノードの位置関係および解像度を取得し,自動的にタイルドディスプレイシステムとして構成するシステムを目指す.
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備考 |
一部成果物はオープンソースとしてGitHubにて公開中.
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