研究課題/領域番号 |
18K11367
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小川 貴弘 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (20524028)
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研究分担者 |
長谷山 美紀 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (00218463)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スパース表現 / 低演算 / 低容量 / 畳み込み |
研究実績の概要 |
本研究では、低演算量・低容量畳み込みスパース表現技術の構築を目指す。具体的に、表現係数をバイナリとすることで、「最近傍基底探索に基づくスパース近似」と「単純な加算のみの辞書学習」を可能とし、画質評価指標に一切依存しない低演算量の畳み込みスパース表現を実現するものである。平成30年度は、「バイナリスパース表現に関する基礎理論の実現」に関する研究開発を実施した。スパース表現の表現係数をバイナリ化することにより、表現係数の推定と辞書学習に関する演算量を削減した。具体的に、表現係数を0または1の値に制限することで、その推定問題を最小の近似誤差を与える基底の探索に置き換えた。これにより、近年活発に研究が行われている高速最近傍探索手法の導入が可能となり、表現係数の推定に関する演算量の削減が実現された。また、表現係数をバイナリ化することで、基底の更新を単純な加算処理に置き換え可能とし、辞書学習に関わる演算量を削減した。本年度では、最終的な目標として最新の高速辞書学習法を超える演算量の削減を目指しており、その実現が可能となった。 以上の研究の実現により、スパース表現における表現係数の推定および辞書学習の演算量が大きく、符号化や復元、超解像等のアプリケーションで必要となる演算コストが極めて高かった問題の解決が可能となった。また、基底を含む辞書を画像毎に求めて蓄積する必要があるため、符号化等のアプリケーションにおいて、その容量が大きな問題となっていた問題を解決可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要の概要で述べた通り、平成30年度は、スパース表現の表現係数をバイナリ化することにより、表現係数の推定と辞書学習に関する演算量を削減可能とするバイナリスパース表現の実現を行っており、本年度に掲げた目標を達成している。具体的に、「表現係数の推定」と「辞書学習」をそれぞれ、「最近傍基底の探索」と「単純な加算による基底の更新」に置き換え、演算量を大きく削減することを可能とし、スパース表現の実応用が可能なレベルにまで達している。 以上に加えて、平成30年度は、令和2年度に実施予定の「自己組織化辞書学習の導入による低容量化の実現」に関する理論の一部を構築しており、当初の計画以上に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下のフェーズをそれぞれ実施する予定である。 【フェーズ2】畳み込みバイナリスパース表現の実現: 本フェーズでは、フェーズ1で実現されたバイナリスパース表現に関する理論に、畳み込みスパース表現手法を導入することで、表現能力の向上とさらなる演算量の削減を目指す。畳み込みスパース表現を用いることにより、対象画像をよりスパースな表現係数で高精度に近似可能となるため、バイナリスパース表現における最近傍基底の探索回数・辞書学習における加算回数の削減による低演算量化と近似性能の向上を同時に実現する。 【フェーズ3】自己組織化辞書学習の導入による低容量化の実現: 本フェーズでは、フェーズ2までに実現される畳み込みバイナリスパース表現に対し、自己組織化辞書学習を導入することで、画像と同時に辞書の再構成を可能とする。具体的に、反復縮小写像系の原理に基づいて、辞書に含まれる基底を画像から切り出される局所領域の縮小写像により導出することで、画像から基底を、基底から画像を反復して再構成可能とする。これにより、蓄積すべき情報はバイナリの表現係数のみとなることから、辞書のサイズに関わらず低容量化が可能になる。 【フェーズ4】ユーザの主観に合致した画質評価指標の導入による近似性能の向上: 本フェーズでは、以上のフェーズで実現される低演算量・低容量畳み込みスパース表現に対し、ユーザの主観評価に合致した画像の近似を可能とする。その結果、最新の深層学習等で求められる定式化できない指標であっても導入が可能となり、ユーザの主観に合致した画像の近似が期待できる。また、本フェーズでは以上で実現される技術を、符号化・復元・超解像等へ応用することで、ユーザの主観評価が高くなるような再構成画像の取得を可能にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、バイナリスパース表現の実現において高速最近傍探索の導入による低演算化を実現することから、その最大性能を評価するためのワークステーションやグラフィックカードが必要であったが、次年度においてより性能の高いモデルの入手が可能であったことから、次年度使用とし、自主財源で既に保持している機器の利用を行った。また、成果発表に関わる費用についても自主財源で対応をしており、次年度の成果発表に関する目標を上方修正するため、これらに支出予定である。
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