研究課題/領域番号 |
18K11370
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
吉田 俊之 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (50240297)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 動画像符号化 / 高フレームレート / 時空間画質 / MOS / 画質制御 / レート制御 |
研究実績の概要 |
2 年目に当たる令和元年度は,対象動画像のフレームレートから時間画質(知覚される動きの滑らかさの主観評価値MOS(Mean Opinion Score))の予測値(EMOS)を与える推定式を導出し,その有効性を検証した.具体的には,前年度に実測した21種類の試験動画像に対する5段階MOS,およびステップワイズに基づく重回帰分析によりEMOS推定に有効と判断される2種類の動画像特徴量(ブロック単位に抽出したフレーム間差分とエッジ量)を用い,30,60,120および240fpsに対する時間方向のEMOS推定式を導出した.また,Leave-one-out法を用いて本推定手法の安定性を検証すると共に他の推定手法と比較することにより,本手法の有効性・優位性を検証した. さらに,室内で高フレームレート撮影を行なう際は,照明の電源周波数との関係でフリッカが混入する場合があり,その影響は,1)時間画質が低下する直接的な影響,および2)特徴量が撹乱されてMOS推定誤差が増大する間接的な影響に大別される.現在の照明器具は高周波点灯方式が主流となりつつあり,従って撮影時に生じる大振幅のフリッカは抑えられる傾向にあるが,残留する小振幅フリッカが後者2)の様に影響してMOSの推定精度を悪化させる可能性が残されている.そこで令和元年度は,導出したEMOS推定方式に対するフリッカの影響を評価した.具体的には,240fps撮影時に50および60Hz点灯の蛍光灯照明によって生じるフリッカパターンを実測し,これを21種類の試験動画像に一様に与えた後に前述の特徴量を抽出してEMOSを推定し,推定誤差の評価を行なった結果,フリッカ存在下であってもEMOSの最大推定誤差は0.8程度に抑えられることを確認した.以上により,提案手法により高精度かつ高フリッカ耐性を有する時間方向のEMOS推定法が確立できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で令和元年度の課題として挙げた「時間方向のEMOS推定方式の導出と評価」については,フリッカ妨害が存在する場合も含め,当初の成果が得られている.また,本手法については,既に学術論文誌に投稿し査読の結果,採録との判定結果が得られていることからも,「おおむね順調に進展している」と判断される.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる令和2年度は,前年度までに得られた時間方向のEMOS推定手法の応用として,動画像符号化におけるレート制御への応用を検討する.具体的には,申請者が過去に提案している空間方向のEMOS推定手法と併用することによってMOSの時空間特性を推定し,与えられたビットレート制限の下での最適フレームレートを推定して符号化を行なう最適レート制御方式への応用,また時間方向の画質を段階的に改善する時間スケーラブル符号化への応用,また大容量バッファを用いて一定画質の下に符号化を行なう画質平坦化方式あるいは定MOS符号化方式等への応用を検討する.特に,240fps動画像を用いることで多段階のレート制御が可能となり,従来の30あるいは60fps動画像では困難であった詳細なレート制御が実現できると期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度までに得られた成果を学術論文誌に投稿し採録との判定を得ているため, 差額は次年度の論文掲載費に充てる予定である.
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