研究課題/領域番号 |
18K11373
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大山 航 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (10324550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオメトリクス / 署名照合 / パターン認識 |
研究実績の概要 |
署名照合は国際的に広く受け入れられている本人確認手法である.署名照合の自動化には(1)照合精度の向上,(2)実利用性の向上,(3)言語多様性の向上の課題が残されている.本研究は,主に,(1)様々な言語の署名を統一的に自動で照合できる「マルチリンガル署名照合」の実現,(2)申請者らが開発した「組み合わせ分割照合法」の高度化,および効果的かつ実用的な識別器学習方法の確立,(3)高品質な日本語署名を含む署名照合評価用データセットの構築と,本データセットの国内外学術界への公開および提供,について研究を行い,有用かつ実用的な自動署名照合手法の確立を目指す. 本年度は,主に,(1)様々なベンチマーキングデータセットを対象にした「組み合わせ分割照合法」の性能評価,(2)これまで署名照合に用いられてこなかったランキング学習の導入検討を行った.これらの取り組みにより,真筆クラスと偽筆クラスとが不均衡になりやすい署名照合手法の学習を高精度化・効率化できる可能性が示唆されている. (1)様々なベンチマーキングデータセットを対象にした「組み合わせ分割照合法」の性能評価では,近年発表された10万筆以上の大規模なデータセットを利用して性能評価を行ない,組み合わせ分割照合により照合性能が向上することが示された. (2)これまでの「組み合わせ分割照合」では,第1段階目の照合で得られた照合スコアベクトルを,第2段階目の識別器で評価し,真筆,偽筆の判定を行なっていた.本年度の研究では,この第2段階目識別器にランクSVMを導入して,不均衡なデータセットに対して頑健な照合を実現した. 本研究に関して,国際ワークショップおよび国内シンポジウムでそれぞれ1件の対外発表を行い,2件の国際会議論文を投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度行った(1)様々なベンチマーキングデータセットを対象にした「組み合わせ分割照合法」の性能評価,(2)これまで署名照合に用いられてこなかったランキング学習の導入検討により得られた知見に基づき,2件の対外発表を行ったこと,2件の国際会議論文を投稿中であることから,当初の計画以上の進展が得られていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,上記手法の改良を継続しつつ,データセット整備も実施する.署名照合手法の評価には種々のデバイスで取得された署名のデータセットが必要である.これまで公開されている評価用データセットは比較的低品質な署名を含むものが多く,署名データの品質を調整しつつ評価を行えるデータセットを構築するために,署名データの収集を行う.また,収集した署名デ ータセットを含め,現在ある公開データセット等を用いて種々の署名認証手法のベンチマーキング実験を実施する.これらに取り組むためにデータ収集用のタブレット型計算機を1式購入する.最終年度である2020年度には,収集した署名データセットを含め,現在ある公開データセット等を用いて種々の署名認証手法 のベンチマーキング実験を継続する.結果を取りまとめて,国際会議または国際ジャーナルに投稿,発表する.また,収集した署名データセットに関する外部発表を行い,オープンデータセットとして国内外の学術コミュニティに公開する.そのための作業従事者への謝金を計上している.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度(2年度目)に必要となる計算資源購入のための物品費および,2019年度に参加予定の国際会議旅費が当初予定より増加する見込みのため,2018年度の物品購入費,旅費を抑制した. 2019年度はこの次年度使用額と当初請求した助成金とを合わせて,必要な物品購入日,旅費に充当する予定である.
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