研究課題/領域番号 |
18K11380
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鎌田 清一郎 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 教授 (00204602)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グラフニューラルネットワーク / スパースグラフ表現 / スペクトルフィルタ / 眼底画像識別 / 病変部位相関グラフ / 顔画像認識 / 調剤過誤防止 |
研究実績の概要 |
近年、ニューラルネットワーク(NN)の一般化としてグラフNN(GNN)に関する研究が益々活発化している。本研究では、前年度に引き続きスパースグラフ表現によるGNN(SGNN)について検討している。今年度は、GNNに向いたスパースグラフをどのように構築すればよいか、どのようなSGNNをモデル化すればよいかに着目した。これらを解決するために、弛緩スパースグラフを提案した。これは、前年度提案したk3SGNNを拡張したものであり、全グラフに対してそのサブグラフ分割を定義し、それぞれをスパース化した上で、サブグラフ間に考慮して全体のスパース最適化を行うものである。また、多層ネットワークにおける層間のグラフ構造を保存するために、スペクトルフィルタを検討し、Cayleyフィルタが最も適していることがわかった。標準顔画像データセットLFW(Labeled Faces in the Wild)を使用した比較評価実験では、本手法が超多層のFaceNetに対して0.01%しか変わらない認識精度を示した。次に、応用研究として、眼底画像の重症度識別による糖尿病網膜症の早期発見を行うため、眼底画像に対して病変部位相関グラフを構築し、SGNNとCNNの融合適用を検討した。公開されている「Diabetic Retinopathy: Segmentation and Grading Challenge」、EyePACSなどの4種類のデータセットを利用し、従来手法DR-GRADUATEなどとの比較評価を行ったところ、提案手法が識別精度に関して数%向上することを確認した。また薬学リスクマネージメントにおける薬局調剤過誤防止実現のため、本研究の応用として薬剤画像の識別問題に取り組んでおり、現在薬局における調剤過誤としてヒューマンエラーによるヒアリハットが大幅に減少していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SGNNの最新の研究成果は、4th IEEE International Conference on Imaging, Vision & Pattern Recognition (IVPR)(2020.8)において研究発表を行う。また、国際会議IEEE International Conference on Signal and Image Processing Applications (IEEE ICSIPA 2019) において、Best paper awardを受賞することができた。さらに、英国ダラム大学ブレッコン・トビー教授との共著論文は、米国電気電子学会の主要国際会議であるInternational Conference on Image Processing 2019において研究発表した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に引き続き、スパースグラフ表現のスパース性を考察し、さらにSGNNの識別精度の向上を図りたい。また新たな方向性としてSGNNとCNNとのハイブリッドな融合も図りたい。さらに、スパースグラフニューラルネットワークの応用研究がさらに増えようとしており、今後も、他応用分野へのその可能性も追求していく予定である。
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