各方式による距離推定の性能について光学系の設定を試行錯誤しながら,検証を進めた.その際,対象物体となる物体面のテクスチャの有無によって,どの程度の影響がでるか検討した.また,実際の撮影を通してアオリ光学系パラメータの理論的・実験的な解析結果を積み上げ,理論値と実験値の乖離点を確認したが,一部についてはその乖離の理由が理解しきれていない部分もある.これは,今後の課題として継続して検証を進める予定である.カラーフィルタ絞りについて,当初予定していた可視光領域だけでなく,赤外光領域を使ったフィルタ絞りに大きな可能性があることに気づいた.この点は,当初の予定以上の成果であり,今後の調査・実験を通じて,どの程度の性能向上が見込めるか,またどのような条件下で有用か,といった点について確かめていく予定である.また,構造が異なるいくつかのニューラルネットワークの導入を試し,その効果や有用性について調べを進めた. 加えて,AIを用いた自発給餌システムの開発に携わっていることから,養殖水槽内における魚の分布を把握することを目的として,本提案方式の採用の可能性について探った.具体的には,深さ1m程度の水槽真上に設置したカメラから水槽内の魚の位置を3次元情報として取得することに利用する.この情報を後段のAIに送り,最適な給餌を実現することを目指している.最終的には,水質の濁りの影響を除去するために可視光から赤外光にわたる範囲で,どの帯域に対するBPF絞りが有効かを考えた.なお,この検討に対して完全な結論が出るまでには至らなかったが,環境光の変化や光以外の外乱要因から受ける影響について調査しながら,光学系パラメータの調整等の再考を行い,実用的なシステムとしての完成度を高める予定である.
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