研究課題/領域番号 |
18K11396
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山本 景子 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 助教 (10585756)
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研究分担者 |
金谷 一朗 長崎県立大学, 情報システム学部, 教授 (50314555)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | IoT / 子ども / 創作活動 |
研究実績の概要 |
子どもは創作意欲にあふれているが,一つのことに集中しすぎてしまうため,創作活動中は適切な見護りが必要である.見護りのために過度の制限を与えると,子どもの創作意欲を奪ってしまうことになるため,従来はカメラによる自動サーベイや,身体装着型デバイスによる事故予測・警告・記録などが検討されてきた.しかし,カメラによるサーベイは事前に事故を予見することが機械だけでは困難であり,また身体装着型デバイスは子どもを過度に拘束してしまう.そこで本研究課題では,子どもが遊ぶおもちゃにセンサ,アクチュエータと無線通信デバイスを仕込み,子どもがどのおもちゃでどのように遊んでいるかをリアルタイムに計測し,それらの計測データから機械学習によって子どもの心理状態や事故の危険を予測し,子どもの適切な見護りと創作活動の支援を同時に行うことを目指す. 本年度も昨年度に引き続き,創作活動のうち子どものおもちゃ遊び,特にボール遊びに焦点をあて実施した.まず,子どもの発達に伴うボールの投げ動作の変化を調査した.次に,調査の結果明らかとなった幼児のボールの投げ動作の発達的変化に着目した5 種類の投げ動作について,実装したボール型プロトタイプを用いて判別が可能かどうかを調べるために,多人数のデータ収集を行った.そして,その5種類の投げ動作の判別可能性を検証した.2 種類の学習アルゴリズムで判別した結果,70[%]程度の精度が得られた.本年度はさらに,センサ内蔵ボールから取得されるデータを可視化することで,保育者(保護者・保育士)が子どもの発達度を推定する支援となるインタフェースを提案・設計し,実装したシステムと2Dグラフ群を用いて簡易的な比較実験を行なった結果,発達の違いを推定できた割合は手法間で有意差は認められなかったが,作業負荷は提案した可視化インタフェースの方が低い傾向があることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集および分析に想定以上に時間を要したが,予定していた多人数でのデータ収集が実施でき,さらにGUIの実装にも着手できたため,おおむね順調に進展していると考えられる.ただし,動作判別の精度の向上に必要なさらなる学習データの収集・分析や,子どもを対象にした本格的なデータ収集が必要であり,今後それらに時間を要することが予想される.また,COVID-19の影響から,それらの実施そのものが困難になることも考えられ,対応策の検討にも時間を要することが予想される.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きボール遊びに焦点を当て,今年度実装したプロトタイプ(センサ内蔵ボール,可視化インタフェース)を用い,子どもを対象にしたデータ収集と提案システムの評価を本格的に開始する.ただしCOVID-19の影響から,子どもを対象にしたデータ収集や多人数での検証が困難になることが考えられる.その場合は,ボール遊び以外のおもちゃ遊びに関する調査を開始し,計測可能なデータの選別,ユーザの特徴的な状態変化が抽出できるかの検証を行い,それに必要なプロトタイプの実装,データ収集,学習による判別可能性の評価を行う. 最終的には,センサを内蔵した複数種類のおもちゃを用いて,複合的に子どもの状態を推定し,それ基づく見護りシステムおよび保護者等への相談データ提供のためのインタフェースの構築を目指す.抽出されたデータを元に,危険や異常行動の発生を予見・警告する見護りシステムと,計測データを遊んだおもちゃや創作物の情報に付加し保護者等に提示するインタフェースを構築する.その後,被験者実験にて,このインタフェースと実装した計測装置を組み合わせ,創作活動が計測により妨害されないか,子どもの見護りが効率的になったかの2点を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施したデータ収集および検証実験は簡易的に実施したものであり,子どもを対象にした本格的なデータ収集は実施できなかったため,謝金が発生しなかった.次年度使用額は,ボール以外のプロトタイプ作成や子どもを対象にしたデータ収集の被験者への謝金,成果発表のための費用(英文校正,学会参加費,旅費等)に使用する予定である.
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