子どもは多様な遊びを行うことで心身ともに成長していくが,その発達の進度は個々で異なっており,保護者や保育者が適切に見護ることが必要である.しかし従来のカメラや身体装着型デバイスによるセンシングでは,見護りのために過度の制限を与えることとなり,子どもの活動意欲を奪ってしまう可能性がある.そこで本研究課題では,子どもが遊ぶときに使用するおもちゃ内部にセンサと無線通信デバイスを仕込み,子どもがどのおもちゃでどのように遊んでいるかをリアルタイムに計測し,それらの計測データから機械学習によって子どもの発達度を推定することで,個々の子どもの適切な見護りと支援を行うことを目指してきた.
本年度は,昨年度に引き続き,創作活動のうち子どものおもちゃ遊び,特にお絵描きに焦点をあて実施した.昨年度までに分析した子どもの発達に伴うお絵描きにおける描画動作の発達的変化を元に,4種類の描画動作を対象に,判別可能性を検証する実験を行った.実験には,昨年度実装した加速度センサを内蔵したペンホルダー型プロトタイプを改善し,新たに3Dプリンタで作成しなおしたものを使用した.10名の被験者(大学生および大学院生)からデータ収集をし,判別木を用いて分類した結果,7割程度の判別精度が得られた.
本課題では,加速度センサを内蔵したボール,ペンホルダーを実装し,子どもの遊びの発達段階をそれぞれ7割程度推定できることを確認できた.判別精度としてはまだまだ向上の余地があるが,子どもの遊びには自由度が高く,また複合的に判断することが重要であるため,実用に足る精度であると考えている.ただし,いずれも実際の幼児を被験者とした結果ではないため,幼児の遊びにおいて同程度の精度が得られるかの検証は今後の課題である.
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