研究課題/領域番号 |
18K11398
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
鈴木 桂輔 香川大学, 創造工学部, 教授 (80373067)
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研究分担者 |
佛圓 哲朗 香川大学, 創造工学部, 教授 (00803967)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自動運転 / 事故発生確率 / HMI / システム安全レベル / ドライバ行動 / ドライビングシミュレータ |
研究実績の概要 |
本研究では,レベル2-3相当の自動運転システム(システム側で運転ができない場合にはドライバに運転の主権を交代)使用時の交通事故の発生を抑制することのできる情報提示システム(インストルメントパネル上部に設定したヘッドアップディスプレイにシステム安全レベルをバー表示)を構築した.また,その有効性について,香川大学で独自に開発したドライビングシミュレータを用いた被験者実験(被験者数;30名)において自動運転時のドライバの運転行動を分析し,事故リスクの低減効果という観点での評価を試みた.この結果,システムの安全レベルをドライバに情報提示した場合では,システムのみでは対応できないように急な割り込み車両の発生を想定した場合,衝突事故の発生確率が約30%低減できることを確認した. また,これらの当初から計画していた研究課題に加えて,上記の情報提示システムの実用化の際の課題となっている,誤作動(今回の実験の場合,例えば,システムのみでの運転が困難な状況において,システムのみでの運転が可能であるような高いシステム安全度をドライバに情報提示)した場合の,交通事故の増加の程度を,ドライビングシミュレータを用いた被検者実験により分析した.具体的には,システムの誤作動の頻度が,欧州のシステムが満たすべき誤作動率の条件(誤作動率;1%未満)の場合,システムの誤作動時を考慮しても,システム安全度に関する情報提示を行う方が,情報提示を行わない場合よりも交通事故の発生確率を低減できることを示した. なお,以上の成果について,(公社)自動車技術会が主催する,ヒューマンファクタ部門委員会(於;東京大学,2019年11月7日)において,英語による基調講演を行った.また,日本機械学会の英文論文集に研究成果が掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H30~H31年度の運転シミュレータを用いた被験者実験の成果の速報を,(公社)自動車技術会ヒューマンファクタ部門委員会(於;東京大学,2019年11月7日)における基調講演(英語)において口頭発表した結果,国内外の当該分野に携わる研究者から多くの反響があった. また,予定よりも計画が順調に進んでいるため,追加の被験者実験を実施した.具体的には,自動運転のレベル2-3における情報提示システムの実用化の際の課題となっている,誤作動が発生した場合の,交通事故の増加の程度を,ドライビングシミュレータを用いた被検者実験により分析した.この結果,システムの誤作動の頻度が,欧州のシステムが満たすべき誤作動率の条件(誤作動率;1%未満)の場合,システムの誤作動時を考慮しても,システム安全度に関する情報提示を行う方が,情報提示を行わない場合よりも交通事故の発生確率を低減できることを示した. 以上の成果を自動車技術会ほかの学術団体における論文集に3件の論文投稿を行い,現在,1件が掲載され、2件が査読を受けている.
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今後の研究の推進方策 |
H30~H31年度の研究実績を総括し,国内外の学術誌に,得られた成果を論文投稿する.また,当初の計画以上に進んでいるため,H31年度と同様に,提案する情報提示システムを実用化した場合の課題を整理し,市場に投入した場合の経済的な効果を試算する費用便益分析を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた,運転シミュレータを用いた被験者実験や,ドライビングシミュレータの制御ソフトウェアの改良に関連する費用について,学内での被験者の効率的な確保,研究代表者による制御ソフトウェアの独自開発により,想定よりも減額が可能となった.次年度は,更なる研究の成果を上げるべく,博士研究員を雇用し,ドライビングシミュレータを用いた被験者実験のデータ解析を実施する予定であり,この人件費(1~2か月分程度)として充当する.
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