レベル2~3に相当する自動運転システム使用時において課題となっているシステムに対する過信を抑制し,人間・自動車系としての総合的な安全性を高く維持することのできる,情報提示システムの設計事例を示した.また,その有効性について,ドライビングシミュレータを用いた被験者実験(被験者数;39名)において自動運転時のドライバの運転行動を分析し,事故リスクの低減効果という観点での評価を試みた.具体的には,情報提示システムの利用の有無での,ドライバの注視行動およびステアリングの把持行動とアクセルやブレーキペダル操作の行動を分析し,ドライバの信頼性に相当する運転準備レベル(Readiness)の時間的変化を定量化した.これらの結果を用いて,研究代表者の鈴木らが提案した信頼性工学に基づく人間・自動車系としての総合的な安全性を定量化することのできる「状態遷移確率モデル」を用いて,自動運転システムのみでは回避できない事故リスクが発生した場合の,事故発生確率の低減率を定量化した.この結果,独自に開発した情報提示システムを使用した場合に,急な割り込み車両が発生した場合,システムに対する過信や過度な依存を抑制することが可能となり,衝突事故の発生確率を,システムを使用しない場合と比較して68%低減できることを確認した. 最終年度の令和2年度では,これら情報提示システムを実用化する際に課題となっているシステムが不作動となった場合の負の効果も考慮した,情報提示システム使用時における人間・自動車系としての総合的な安全性の改善効果について,被験者実験により検証し,実用化における課題を整理した.具体的には,この負の効果を考慮しても,システム利用による事故低減効果を顕在化させるために,情報提示システムに求められる不作動確率の基準値およびシステム設計のガイドラインを示した.
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