研究課題/領域番号 |
18K11406
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
荒生 弘史 大正大学, 心理社会学部, 准教授 (10334640)
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研究分担者 |
浅野 裕俊 香川大学, 創造工学部, 准教授 (70453488)
諏訪園 秀吾 独立行政法人国立病院機構沖縄病院(臨床研究部), 神経内科, 脳・神経・筋疾患研究センター長 (50345518)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳波 / イヤホン型電極 / 外耳道 / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
本研究は、中枢系の生体情報として高い潜在力を持つ脳波を、日常での着用に違和感のないイヤホン型電極により計測する技術を開発するものである。2019年度の成果として、下記の点があげられる。前年度までに、特許取得済みのパラソル型イヤホン電極を用いて、さらにデータ取得を進めた。とりわけ、独自のパラダイムを用いて、側頭葉に波及する事象関連電位の一部について、パラソル型電極を用いて明瞭に記録できることを確かめることができた。一方で、P300を記録するオッドボールパラダイムにおいては、外耳道において低振幅のP300に加え、P300以外の成分について記録できる可能性が示唆され、引き続き検証に値するポイントを見出すことができた。ミスマッチ陰性電位については、外耳道および耳朶は頭部外基準電極を用いたときにはほぼフラット(基準電極に近い電位)であるが、鼻尖基準においては、近傍の耳朶やマストイドとともにいわゆるmismatch positivityに転換することがわかった。フォーム型の試作と計測も進み、別途の実験により、実際に臨床応用のフェーズに入っている聴性定常反応の一種について計測できる可能性が示された。その他、現在までの生データの確認によると、外耳道においては概して眼球に由来するアーチファクトの混入が比較的少ないこと、また、パラソル型において外耳道内の180度異なる地点からの記録においてはよく似た波形が計測されることが示唆された。今後も引き続き、電極の開発・改良と、これまでに得られた知見の再現性を確認するとともに、イヤホン型電極の新たな有用性が見いだせるポイントについて検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに特許を取得したパラソル型を用いたさらなるデータ取得に加え、複数拠点において試作を繰り返したフォーム型においても記録実績ができた。とりわけ側頭葉由来が疑われる事象関連電位の一部や、すでに応用フェーズに入っている聴性定常反応について明瞭に記録できることについて、第一歩となる知見が得られたことがおもな進展としてあげられる。他の脳波およびアーチファクトについても、基礎的知見が得られつつある。今後はこれらの知見に関して、個人差や頑健性の観点からも引き続き検証を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在、パラソル型電極、フォーム型電極のいずれも手作りで作成しており、限界はあるものの、引き続き開発・改良を進める。2019年度末から2020年6月現在まで引き続き、新型コロナウイルス感染症の問題から、大学における実験室が使えない状況となっており、今後も実験室の使用については不明瞭な状況である。実験室が利用できるようになってからも、新型コロナウイルス感染症について十分留意しながら計測を実施することになるものと考えられる。この状況が続けば実験の進展に大きな影響があるため、その場合は、研究期間の延長等の措置を適用し、研究を継続する方法も検討している。この問題が解決次第、引き続き、これまでに得られた知見の再現性を確認するとともに、イヤホン型電極の新たな有用性が見いだせるポイントについての検討を進める予定である。得られた知見については、随時とりまとめるとともに、学会発表等における公表を進める予定である。
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備考 |
他に、当構成員を中心に、第12回 医工心「脳波」研究会(2019年5月、香川大学)、第13回 医工心「脳波」研究会(2019年8月、大正大学)、第14回 医工心「脳波」研究会(2019年9月、大正大学)、第15回 医工心「脳波」研究会(2019年11月、大正大学)、第16回 医工心「脳波」研究会(2020年1月、大正大学)を開催し、関連の話題提供と議論、実測試行、研究打ち合わせを実施した。
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